日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『セントールの悩み』
『セントールの悩み』第12巻
村山慶 徳間書店 ¥620+税
(2016年3月12日発売)
人馬、人魚、翼人などなど。様々な亜人種族が共存する世界を描いた、オムニバスSF青春物語。
第12巻では、ヒロインの人馬、姫乃が学校で所属している「オカルト科学部」の活動の話が中心。
なんともトンチンカンな名前だが、じつはこの部、作品のテーマに近い。
このマンガは、あらゆるファンタジー的なものを、論理的に体系化して、科学・社会学として表現している作品。
なぜ人馬が進化したのか。人魚の生態はどうなっているのか。バリアフリーはどのくらい行われているのか。人種間の問題は生じないのか。
現実の人間社会に照らしあわせながら、歴史も含めて世界そのものを構築している。
となれば、この世界で起きる心霊現象も、なんらかのかたちで証明できるはずだ。
オカルト科学部は、用具室の幽霊のたたりや、かつて神とあがめられた人魚のミイラに対峙する。
部員たちは、幽霊の類はいっさい信じていない。彼女たちが、推理のようにこれらのオカルトを科学的に解明していくのがおもしろい。
亜人種の女の子たちが「天国は存在するのか」を論じあうシーンは、科学シミュレーションとして非常にユニークなので、ぜひ見ていただきたい。
さて、もうひとつ第12巻の目玉になっているのが、亜人アイドルの話だ。
亜人種のなかにあっても、南極人と呼ばれる首から上が蛇の種族は、かなり珍しく、まだ謎が多いらしい。
その南極人の少女が、アイドルグループに所属。最初は観客も「萌えない」と言っていたものの、歌声とダンスに惹かれ、あっという間に話題騒然。
しかしアイドル仲間たちはこれを冷静に見ており、南極人の子の容姿が特異だから目立つ、というのは重々承知。アイドルは目立ってなんぼなのだ。
「目立って褒めそやされる」のは、外見の差別とどう違うのか? ふと考えさせられる。
ほわほわとした雰囲気と、かわいい女の子があふれるこのマンガ。
描かれている人間社会の風刺は、どこまでも鋭い。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」