日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ねこったけ!』
『ねこったけ!』第1巻
灘谷航 小学館 ¥429+税
(2016年3月18日発売)
昨今、TVや雑誌で多くの猫特集が組まれるなどさまざまな媒体で猫の話題を目にすることが増えた。
だが私は問いたい……。
そこに愛はあるのかい?
「なんとなく最近猫が人気だから」で取りあげていないかい?
そんな投げかけを、表紙の絵ひとつで打破するネコ愛にあふれた作品がある。
灘谷航の『ねこったけ!』だ。
猫の魅力に心を奪われた高校生・富士健祐(ふじ・けんすけ)。日々、野良猫たちの観察に余念がない彼は、猫の言葉を完全に理解する根古屋 仁(ねこや・じん)と出会う。
心身ともに猫になりきることで相手を倒す「猫拳道(びょうけんどう)」の使い手である根古屋に弟子入りし、自在に猫たちと通じあえる力を手に入れるべくネコ道へと足を踏み入れる。
この作品を読むことで、猫の生態はおろか、どうすれば猫に好かれることができるのかわかってしまうのだ。
読み進めていけば、自由で気まぐれ、なつかないイメージが強い猫だがじつはそれだけではないことがわかるはず。
表紙に描かれている猫の肉球の位置そして数。猫の鼻の形。ヒゲ。ひと目見ただけでそれが本気だと伝わってくる。
こうしたディテールを保ちつつ、ただでさえかわいらしい猫をマンガとしてかわいく描くことは、じつは難しいのだ。
人間でもそうだが、ただ写実的に描くだけではかわいくならない。絶妙なバランス感覚が必要である。
作中でも、数多くの猫が登場するのに一匹一匹の模様やしっぽの形、体格まで特徴が描かれているのも非常にネコポイントが高い。
猫好きの筆者自身もネコ道においてはまだまだである。
“ネコの達人(ネコマスター)”になるべく、引き続き修行をつみたい。
<文・川俣綾加>
フリーライター、福岡出身。
デザイン・マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブや、「マンガナイト」などで活動中。
著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』(岡田モフリシャス名義)。
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