日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『葬送のリミット』
『葬送のリミット』第1巻
篠房六郎 講談社 ¥590+税
(2016年3月23日発売)
主人公のバドラック・ロッキは、「天下無敵のバドラック」、と呼ばれている枝闘士(ブランチャー・剣闘士のようなもの)。
……いやいや待てよ、いくらなんでも「無敵」って、人間どんな達人だって負けることはあろう、称号としては大げさすぎないか?
ところが本当に負けないのだ。しかもそこまでめちゃくちゃ強いわけではない。
彼は死なない。そういう運命だからだ。
バドラックが助けた、鬼(ニ)族の少女・リミット。彼女は未来予知の力を持っている。
と言っても正確に何かを予言できるわけではなく、見る対象が「いつ死ぬのか」がわかる、というもの。
だからバドラック以外の戦士の死期を確認し、引き算していけば、だれが勝ち残るか判明する、という仕組み。
便利なようだがこの力、非常に残酷だ。
なにせ周囲の人間がいつ死ぬのかわかってしまう。知りたくなくても、だ。
たとえば数十分後に死ぬとわかっている相手を目の前にしたとする。それはもう、運命だからあきらめるしかない。
しかし彼女はその相手を助けるために、自ら危険なところに飛びこんでいってしまう。
ということはわかっているのに、相手が死ぬ瞬間に立ち会い続けなければいけなくなる。
どうにもならない。見捨てられないのだ。
だから、「葬送」。
バドラックがトーナメントで勝つ、ということは、参加している人間たちはなにがあっても絶対死ぬのがわかっている。
力自慢の残虐な人間もいれば、真摯に戦う誠実な人間もいる。
そして、みんな平等に死ぬ。
これをわかって見送るのは、あまりにも酷だ。
第1巻では枝闘士トーナメントの様子を中心に描いている。人の死期を見ることができるリミットは、何かしらの災害が来ることを感じ取っている。
これからたくさん人が死ぬ。間違いなく死ぬ。見えているのだから。
その時彼女がどう動くのか。
黙って見送り続けるのは、もしかしたら自分が死ぬことよりつらいかもしれない。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」