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『BOX! -パンドラデイズ-』第2巻 佐伯 【日刊マンガガイド】

2016/05/02


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『BOX! -パンドラデイズ-』


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『BOX! -パンドラデイズ-』第2巻
佐伯 少年画報社 ¥600+税
(2016年4月11日発売)


大学生時代、「セックス」の影は絶対にちらつく。
20歳前後といえば、夢中になれることを探したり、将来の職業を考える時期だ。同時に性知識が合法的に解禁され、生々しく感じる年齢でもある。
高校時代よりはるかに「あの2人たぶんセックスしてるんだろうな」感が現実味を帯びてくる。

この作品は童貞からヤリチンまで、処女からビッチまで、あらゆる人間が登場し、空まわりする大学生活や性のいざこざに関して悩むオムニバス群像劇だ。
メインキャラクターの桜庭は、だれとでもすぐ簡単に寝る女性。本人ははっきりと「ビッチ」を自称している。
もちろんセックスは大好きで、性の会話はあけっぴろげ。だが単なる色情魔ではない。
彼女は性的快楽の一段階上に「人間関係を円滑にする方法」「力を抜いて自分を保つ手段」のバランスをきちんと保っている。
だから性問題がこじれたことはないし、友人や後輩たちからの人望はとても厚い。

一方、宇梶という青年は、はっきりと自分が「童貞」であると述べている。
別に自慢しているわけではない。彼は性体験の有無が人間を格づけするものではない、と理解しているのだ。
童貞であれ処女であれ、と叫ぶ人をも制する。貞節は他人に強要するものではない。また貞節を笑われ傷を負った人は胸を張っていい、と。

描かれていることは、ボンクラ大学生たちの姿。登場人物はみんな、若さゆえに、後になにかしら恥じるであろうことをしている。
いうなれば黒歴史大集合。いやあ、大学独自のフワフワした狂乱の渦の威力は絶大だ。
オタサーの姫、リストカット、変態AV鑑賞会、サークル内穴兄弟、新入生喰い、Twitterの別アカウント、オナホ、変態性癖などなど。
性や恋愛がらみの問題で、ときにだれかと修復不可能なほど深く傷つけあってしまうこともあるだろう。また大失敗をした後にゲラゲラ笑いながら、大人になったと実感できることもあるはずだ。

処女・童貞という言葉に引っ張られた人も、股間が乾く暇もない日々をすごしていた人も、成人ならなにかしら、この作品を読むと引っかかる部分があるだろう。
20代前後のよかった思い出も最悪の気持ちも、全部ひっくるめてまぎれもない自分の事実。

大人になった人間はみんな、それを咀嚼(そしゃく)して、ちゃんと一歩一歩自分のペースで進んできてるんだよ、と肯定してくれるマンガだ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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