日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『てのひらの熱を』
『てのひらの熱を』第1巻
北野詠一 講談社 ¥429+税
(2016年4月15日発売)
空手マンガというと、どうしても格闘技の側面が強調されて荒々しい作品になりがち。それはそれでワクワクするが、北野詠一の新作『てのひらの熱を』はスポーツとして空手にフォーカスし、少年マンガらしいハツラツとしたストーリーで勝負している。
主人公は、もうすぐ中学生になる木野下慎也(きのした・しんや)。春休みを利用して地元の川崎から茅ヶ崎の親戚の家へ遊びにきている最中に、頭上から植木鉢が落下してくるというアクシデントが!
しかし、間一髪で同い年の少年・柳屋匠(やなぎや・たくみ)の蹴り技に助けられる。
匠は小学生としては無敵を誇る空手少年。あまりにも強すぎて相手になる同世代がおらず、孤独を感じていた。
慎也は植木鉢の土で汚れた服を着替えるために匠の通う道場へ行き、ついでに空手を教わることに。
ところがド素人であるはずの慎也の立ち姿を見て、匠は驚愕する――。
平凡に暮らしてきた少年が、なにかの拍子に素質を見出され、その種目でめきめきと才能を発揮していくのはスポーツマンガの王道。
慎也の場合は“姿勢”だった。
匠曰く、体重の乗せ方、視線の据え方が、強い空手家のオーラを醸しているそうだ。もちろん彼は空手の経験者ではなく、単純に姿勢がいいだけ。とある理由から常に姿勢を正して生活しているせいだ。
慎也が茅ヶ崎に滞在している一週間、2人は空手を通してすっかり意気投合。中学生になったら空手部に入ると宣言する慎也を追いかけるように、匠も川崎の中学へ越境入学することに決めた。
2人が入学した川崎浮島中学は、奇しくも空手の強豪校。個性豊かな先輩部員たちとともに、空手漬けの熱い青春が始まる。
空手門外漢の読者でも、慎也といっしょにイチから手ほどきを受けられる親切設定。
まだまだヒロインも悪役も敵校のライバルもだれひとり出てきてない序盤戦、巻が進むにつれて役者がそろっていき、激熱の展開になることは必至だろう。
2人の成長を見守るため、しっかりと併走していく所存です。押忍!
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てライター。公開中の映画『アイ アム ア ヒーロー』の劇場用プログラムに参加しております。原作と同じくらいおもしろいので観てね!