日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『あげくの果てのカノン』
『あげくの果てのカノン』第1巻
米代恭 小学館 ¥552+税
(2016年6月10日発売)
「月刊!スピリッツ」で連載中の話題作の単行本第1巻がついに発売!!
ちょっと(いや、かなり!)挙動不審な、ストーカー気質の女の子のよくある恋物語かと思って読み進めてゆくと、次第に足元がぐにゃりとゆがんでゆくような感覚に襲われる。
憧れの先輩を神様のように崇めたてまつり、彼を観察することだけを生きがいに暮らしているカノン。
見返りを求めず、純粋に盲目的に誰かを思い続ける「恋」の甘美さとグロテスクさを、ここまで徹底的に描いたマンガがあっただろうか?
自分の欲望も可能性もおし殺して、「片想い」という自己完結した世界に生きてきた少女が、いちずな恋心を爆発させる瞬間のカタルシスは、こっ恥ずかしくもまぶしいばかりで、「先輩との道ならぬ恋=不確かな世界」に向かって一歩を踏み出すカノンを応援せずにいられない!
平和な日常のすぐそばでエイリアンとの壮絶な戦いが繰り広げられる世界。どれだけ体が負傷しても再生できる特務部隊。“再生”するたびに、どこかが変わってゆく先輩……。
この謎めいた世界観は、はたして何を意味しているのか?
押見修造『漂流ネットカフェ』や、ふみふみこ『さくらの園』なんかも彷彿とさせる、思春期の恋と成長をめぐる異色SF。これは要注目です。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69