日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『テラモリ』
『テラモリ』 第4巻
iko 小学館 ¥552+税
(2016年7月12日発売)
「裏サンデー」、「マンガワン」にて連載され大人気を博す、「スーツマンガ」の最新刊。
ゲーム大好きインドア派女子大生・高宮陽(たかみや・よう)は、時給の良さに惹かれて、紳士服を扱う「テーラー森」の中央店でアルバイトをすることに。
ファッションへの興味は低く、接客へ強い苦手意識があったものの、売り上げの鬼である副店長の平尾宗隆(ひらお・むねたか)に紳士服のすべてを叩きこまれ、ようやく仕事も板についてきた。
高宮は厳しい平尾に当初は反発することもあったが、尊敬の念を抱きつつあり、さらにある事件がきっかけで平尾のほうが自分の気持ちを自覚していく。
しかし、仕事に熱意を傾けだした高宮は、その好意に気づかないようで?
第4巻では別店舗に勤める平尾の元・彼女でデキる女性の三沢雫が登場し、平尾の恋愛への不器用さが描かれていく。イケメン風の見た目に反し、ストイックな姿勢に好感度上昇!
一方で高宮は、とある男性に告白されるのだが、これもやつれて「ゾンビ」になってしまうほどの奮闘が報われた結果であり、筆者も我がことのようにうれしくなった。
そしてもうひとつ、平尾は仕事において、ある岐路に立たされる。アパレル業界ものだが、裏側はなかなかシビアなもので、中央店の経営も決して楽ではない。
実際ブラックバイトを疑う声もあるほどだが、社員の春日原花(かすがばる・はな)、契約社員の朝倉戒道(あさくら・かいどう)、同じ学生バイトの柳川慎太郎(やながわ・しんたろう)らも仕事に真摯で、仲間意識が高いこともお仕事マンガの爽快感を味わせてくれる。
紳士服、しかもスーツ専門ならば、カジュアル服やレディースのように流行がめまぐるしくなく、似たようなものばかりで楽かと思いきや、「細部に『洗練』の神が宿る」といったところか。少しの違いでオシャレさが格段にアップしたり、逆に野暮だけでなく失礼にあたったり、となかなか奥が深い。
女性読者なら気のきいたプレゼントを贈る参考になり、男性も読めばスーツで男っぷりが一段あげられ、トリビアもいっぱいなのでビジネストークに役立つ……かも?
ボロい、人手不足など難点の多い中央店に新たな風が吹く模様。
それは、春一番なのか、恐ろしい突風なのか?
靴の先(意外と汚れがち)まで手入れして待つべし!
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。