日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『うしおととら 完全版』
『うしおととら 完全版』 第15巻
藤田和日郎 小学館 ¥1,100+税
(2016年6月17日発売)
アニメは6月いっぱいで放映が終わったけれども、まだまだ『うしおととら』完全版のリリースは続く。
破魔の霊槍「獣の槍」の伝承者として数奇な運命を歩む中学生の蒼月潮(あおつき・うしお)と、その命をつけ狙いつつも不思議な共生関係を築いている妖怪のとら。
そんなふたりの名コンビぶりを、まだしばらく現在進行形の刊行物で楽しむことができそうだ。
この第15巻では、シリーズ中でも屈指の人気を誇るサブキャラクター・鏢(ひょう)が潮ととらの前に再登場する第三十九章「業鬼」、その鏢が長年探し求めていた妻子のかたき・紅蓮とついに対面する第四十一章「獣群復活」、そしてクライマックスに向かう衝撃的な展開のプロローグである第四十三章「風が吹く前」など、シリーズ全体のなかでも重要な役割を果たすエピソードが並ぶ。
ストーリーの充実に比例するかのように、画面の密度もいや増しており、完全版の大判かつ綺麗な印刷で眺めることに、よりいっそう意味がある内容になっている(特に紅蓮の「ドス黒さ」の印象は鮮烈だ)。
なお、著者の藤田和日郎は現在「週刊少年サンデー」で新作『双亡亭壊すべし』を連載中で、そんなこともあってか、画集の再販や創作の秘訣を語った書籍の刊行など、関連本のリリースが相次いでいる。いずれも興味深い内容だ。お見逃しなく。
<文・後川永>
ライター。主な寄稿先に「月刊Newtype」(KADOKAWA)、「Febri」(一迅社)など。
Twitter:@atokawa_ei