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『こいいじ』 第4巻 志村貴子 【日刊マンガガイド】

2016/08/09


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『こいいじ』


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『こいいじ』 第4巻
志村貴子 講談社 ¥429+税
(2016年7月13日発売)


甘くて苦くてくせになる、片想いワールドがひそかな共感を呼んでいる『こいいじ』の最新刊。

下町の銭湯「すずめ湯」のまめは、子どもの頃からずっと幼なじみの聡ちゃんに片想いを続けている。何度も告白してはフラれ続け、すでに聡ちゃんは結婚して子どももいて、まわりも次々に結婚していくなか、今度こそ子どもの頃からの片想いにケリをつけようと不動産屋の河田さんとつきあい始めたまめだったが……。

一方通行ゆえに「恋愛」には至らないものの、噓のない親愛で結ばれたすずと聡ちゃん。ファンタジーのように心地良く甘やかな「片想い」のぬるま湯に、このままずっとつかっていたい……と思っていた筆者のようなファンには、本巻での急展開は、嬉しいような残念なような、心中フクザツすぎる!

そもそも恋愛とは、決して楽しく美しいだけのものではない。
そんなものは恋愛のなかでも、ごくわずかな時期だけのもので、大半を占めるのは、嫉妬や束縛や裏切りといった苦しく辛い時間であることも少なくない。

ようやく悲願が叶い、聡ちゃんとつきあうことになったまめも、ご多分にもれず、たんに幸せなだけではいられなそうなわけで……。一方通行ばかりで、なかなか交わらないがゆえに、穏やかな均衡を保っていた周囲の人間関係にも、小さな波紋が少しずつ広がってゆく。

そんな水面下のさざ波を鋭敏にとらえ、せつなく甘やかに描いてみせる著者の筆致は、さすが!
まめにはいい加減、ちゃんと傷ついて、ちゃんと成長してほしいほしい! とヤキモキしながらも、この「片想い以上・両思い未満!?」の夢見ごこちが、少しでも長く続きますように……と願わずにいられない。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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