日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『兄の嫁と暮らしています。』
『兄の嫁と暮らしています。』 第1巻
くずしろ スクウェア・エニックス ¥562+税
(2016年7月25日発売)
両親はだいぶ前に死んだ。兄は結婚してから、半年前に死んだ。
今家にいるのは、自分と、兄の嫁。つまりお義姉さん。
女子高生の志乃は、優等生なわけではないけど、自分なりに相手の心を尊重しようといつも心がけている少女。
いっしょに住んでいる兄の嫁・希のことをけっして悪く思っていないし、むしろめちゃくちゃ親切にしてくれる彼女にとても感謝している。
希は小学校の先生。夫を亡くしてからは義妹の志乃とうまくともに暮らすため、試行錯誤を繰り返し続ける。
彼女はとにかく志乃と仲よくなりたい。
ほんわかした彼女は、気をつかってくれる志乃との距離感がうまくつかめない。
血がつながっていない家族は、いい人同士であればあるほど、こじれるものだ。
生活はうまくやれてはいる。ただ志乃も希も、お互い気を使いすぎるがゆえに、何かもの足りない。親切にしようとしすぎて、友だちにも家族にもなりきれていない。
人間が本当に安らげるのは、相手が心を開いてくれた時だ。
優しさだけではない、感情をぶつけてきたり、わがままを言ってくれたりしてはじめて、一歩踏み出せるものだ。そこに至るまではどうしても時間がかかる。
第1巻では歯がゆい関係が続くものの、後半ではしだいに敬語でなくなり、冗談を言ってじゃれあうくらいにはなっていく。
しかし亡くした人を媒介とした場合の人間関係は、どうしてもしこりが残る。
そもそもいつまで2人で暮らすんだろう。
まだまだいびつな2人暮らし。安心できる家、と呼ぶにはもう少しかかりそうだ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」