日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『恋のツキ』
『恋のツキ』第1巻
新田章 講談社 ¥570+税
(2016年7月22日発売)
欲望に正直すぎて、いろんな人とエッチしちゃう女の子と彼女を独占したいピュアボーイの物語『あそびあい』で「恋愛とセックスはイコールか否か」論争を巻き起こした!? 新田章の新連載。
31歳のワコは、つきあって4年目になる彼氏と同棲中。
トキメキもないけど不満もない、ぬるくも平穏な日々のなか、まさかの運命の出会いが訪れて……。
「マンネリ彼氏かトキメキが止まらない超タイプ(でも犯罪級の年下)か?」これまた究極にして普遍の難題を投げかけてくるあたり、さすが新田章!
その運命の相手というのが、ワコが働く映画館(単館系ミニシアター)に通ってくる高校生なのだが、ワコの性別とか年齢とか関係なく、何より映画の話をできるのがうれしくてしょうがない! って感じがいとおしくって。
2人の会話やメールのやりとりもいちいちほほえましく、道端に座って、いっしょに映画の話をしているだけで楽しくって、世界がキラッキラッ輝いて見える「あの感じ」がなんともリアルにリリカルに描かれていて、読みながらキュンキュンが止まらない!
手堅い道を選ぶべきか、あるいは後先考えずに本能に身を任せるか。だれもが迷わずにいられない人生の選択肢だが、適齢期のアラサーであるワコは、今の彼と別れたらこの先ずっとひとりかもしれない……という恐怖ゆえ、当初は自分の欲望にふたをしようとする。しかし、どうしようもなくこみ上げてくる衝動についに身を任せて――。
今後、2人の関係はどうなってゆくのか?
ワコの秘密に気づいたマンネリ彼氏の取る行動は?
早くも続きが気になってしようがない急展開だが、たんに恋の顛末を描くだけでなく、どの恋を選べば「当たり」なのか? 恋愛はガチャガチャやくじ引きとは違って、どれが「当たり」かは決まっていないし、そもそも「当たり」ってどうゆうこと――!? といった「恋愛や幸せの定義」そのものにゆさぶりをかけてくるのが、新田章の真骨頂なわけで。
本作もまた論議を呼ぶ「問題作」になるか、乞うご期待!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69