365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
8月30日は冒険家の日。本日読むべきマンガは……。
『クドー遺宝伝』
上津康義 少年画報社 ¥562+税
1970年のきょう、8月30日。
登山家・植村直己が北米アラスカのマッキンリー山(現在の正式名はデナリ)への単独登頂に成功した。
植村はこれ以前にヒマラヤ、ヨーロッパアルプス、さらにアフリカ、南米で最も高い山々に登頂していたため、マッキンリー制覇と同時に“五大陸最高峰単独登頂者”という称号を得ることになった。
これを記念したのが「冒険家の日」である。
もっというと、1965年に同志社大学の遠征チームがアマゾン川をボートで下る挑戦を成功させたのも8月30日。
1989年に海洋冒険家の掘江謙一が当時世界最小クラスの外洋ヨットにより単独で太平洋を横断したのも8月30日……と、冒険がらみの記録が集中しており、それらをひっくるめた記念日でもある。
さて、そんな日にご紹介するのは『クドー遺宝伝』というマンガ。
聖悠紀のアシスタント出身である上津康義のデビュー作で、そのものずばり冒険を題材にした作品だ。
遺跡荒らしの青年・クドーと、彼の仕事に巻きこまれた骨董店主の若い女性・遙が繰り広げる伝奇系アドベンチャーになっている。
クドーは少年のように小柄な身体で強力な法術を使いこなす謎多き若者。
巨体の獣人へ変身する亜人間(デミヒューマン)をおともに引き連れ、チベット、南米、フィリピンのレイテ沖島と世界各地を飛びまわっては超常現象を引き起こす危険な秘宝を捜している。
やりかたはいつも荒っぽく、遺跡をまるごとぶっ壊すのもしょっちゅうなので現地の軍隊やマフィアと戦闘にもつれこむのが日常茶飯事だ。
一般人の遙は命がけのシチュエーションに毎回ひいひいいいながらも、常識をくつがえす刺激がやみつきになり、クドーや亜人間とトリオになって冒険を続けていく……という内容。
超自然の秘宝争奪戦といえば名作『スプリガン』があるが、本作の場合は世界を守るヒロイズムよりも、冒険の魅力そのものにひかれるやんちゃな精神が読み味として強い。
そこは作品の視点がプロフェッショナルのクドー自身ではなく、冒険の世界をいちから肌に感じて学ぶ遙の目に置かれているためだろう。
みなさんも本作を読んでワクワクしたあとに、何か冒険してみてはいかがだろうか。
遠い秘境に行かなくても、まだためしたことのない遊びをしてみたり、行ったことのない場所へお出かけてしてみるだけで、それはもうりっぱな“冒険”になるだろう。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7