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9月5日は『雨月物語』(映画)が「ヴェネツィア国際映画祭」で銀獅子賞を受賞した日 『雨月物語』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/09/05


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

9月5日は『雨月物語』が銀獅子賞を受賞した日。本日読むべきマンガは……。


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『中公文庫 マンガ日本の古典28 雨月物語』
木原敏江 中央公論新社 ¥590+税


1953(昭和28)年9月5日、溝口健二監督の『雨月物語』がヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した。一躍海外に溝口ファンを増やした代表作のひとつである。
溝口健二は、1950(昭和25)年に『羅生門』で同映画祭の金獅子賞を受賞した黒澤明や、『東京物語』の小津安二郎と並んで今も世界の映画人に大きな影響を与え続けている。
“女性映画の巨匠”と呼ばれるのは、悲しい運命に翻弄される女性の感情を長まわしのカメラワークでリアルにすくいとり、その情念のすさまじくも美しい様を描き出したことによる。

原作の『雨月物語』(上田秋成)は、今の言葉でいえばホラー短編集だ。
溝口はこのなかの『浅茅が宿』『蛇性の淫』の2編を主軸としてストーリーを構成しているが、これらはいずれも愛した男へのヒロインの念が怪異を生むというもの。
映画を観た人も観ていない人も、ぜひこのマンガ版を読んでみてほしい。

マンガを手がけたのは『摩利と新吾』で知られる木原敏江。
少女マンガ風味はほどよく抑えめ、いつのまにか感情移入させられている人物描写の巧みさはさすがのひと言。怪談でありつつも幽玄の美を備えた『雨月物語』の、妖しの世界にひきこまれるのだ。

本作は、平成9年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞した作品。
純粋に愛を貫くけなげさ、欲や慢心が魔を引きよせるという戒めなど……永遠普遍のテーマに思いを馳せずにいられない。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」

単行本情報

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