日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『さよならノクターン』
『さよならノクターン』第2巻
永瀬ようすけ KADOKAWA ¥580+税
(2016年8月4日発売)
中学最後の夏休みというのは特別だ。
義務教育も終わりの年、ぼんやりしてはいられない現実を緩やかに突きつけられる。受験に備えて勉強に励むか、あるいはそのフリさえしていれば親もうるさいことはいわない、「情状酌量」されている状態は生ぬるく、思春期まっさかりの心をむずむずさせる。
今は廃墟となっているラブホテル「ノクターン」で時間をつぶすようになったジュンは、同じく居場所を求めてここにたどりついた4人の仲間と出会う。
偶然にも全員が中学3年生。気楽な関係を保つため、お互いにフルネームさえ教えず、“日常”では出会っても知らないふりを装うのがこのグループのルールだ。
夜な夜な集ううち、ひょんなことから人命救助した5人は、正体を明かさずによいことをして世間を騒がせるゲームに興じ始める。
しかし、夏休みに入り――より大きな刺激を求める5人は逃走中の銀行強盗犯をつかまえようとするが、犯人に反撃され、勢いあまって殺してしまう。
ちょっとした“秘密の遊び”が思わぬ事態に急転。5人は殺害を隠しとおすことを決めるが、5人それぞれの個人的な事情や感情が、小さなほころびを作りだしていくのだ。
たいへんなことをしでかしてしまった後悔と、ヤケクソな万能感が彼らをますますヤバい方向へと暴走させる!
大人でも子どもでもない年頃ゆえの傲慢さ、あまりに刹那的な行動が胸苦しくなるようなサスペンス・ストーリーだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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