日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『狼少年は今日も嘘を重ねる』
『狼少年は今日も嘘を重ねる』 第3巻
namo KADOKAWA ¥650+税
(2016年8月12日発売)
五木啓太郎が恋をした少女・外鯨葵(とくじら・あおい)は、重度の男性恐怖症だった。
啓太郎は女装をして「イツキ」を名乗り、彼女の恐怖症克服の助力をする。
優しく接するイツキが啓太郎だと気づかない葵。2人はどんどん親しくなっていく。
仲良くなればなるほど、啓太郎は葵に嘘を積み重ねていかざるをえなくなる。
女装「イツキ」と通常「啓太郎」の2つの顔で暮らす少年の恋愛物語。
おもに葵を通じて、ディスコミュニケーションの苦しさと、人と接する時に感じる痛みが描かれるため、コメディタッチだがシリアスなシーンも多い。
だれかと仲良くしたい、というのは多くの人が持つ、自然な感情。
今まで葵は図書室に引きこもることで、男性どころかいろいろな人との接触を避けていた。
しかしイツキ(女装のほう)と仲良くなってからは、もっと話したい、いろんな人とのつながりを持ちたい、と願うようになる。でもそれは、自分が傷つくかもしれないという恐怖と表裏一体だ。
葵は必死に努力して、人混みのなかを歩き、男性にも少しずつ近づけるよう練習する。
協力してくれるイツキといっしょにいたい、という強いが思いからだ。
その感情は、限りなくイツキへの恋に近い。
そこに加えて、葵の幼なじみ・倉敷牡丹が、啓太郎(男のほう)に恋をしてしまったものだからやっかいなことに。もちろん彼女も、「啓太郎=イツキ」だとは気づいていない。
葵の男性不信が目立つが、じつは啓太郎も相当な人間不信だ。
彼は自分が見た目が怖く、みんなから避けられていたため、かなり心がひねくれていた。
しかし女装をすることで、人との距離感を見つめなおし、大きく成長している。
だからこそ両方の姿で慕われるほどの優しい人間になった。
問題は、全部嘘だということ。
特に牡丹が元気なため、作品全体の雰囲気はとても明るい。
しかしここから先、嘘がばれた時の地獄のような展開が待ち受けている可能性は、かなり高い。
幸せ度があがるほど、落下のギャップは大きい。
仮にバレたあとに、最高度にうまくいったとしても、葵と牡丹の両方とつきあうことは不可能なんだよなあ……。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」