365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
10月21日は唐沢なをき・蛭子能収・古川益三の誕生日。本日読むべきマンガは……。
『まんが家総進撃』 第4巻
唐沢なをき KADOKAWA ¥690+税
10月21日は「唐沢なをき・蛭子能収・古川益三の誕生日」。
唐沢なをき(「読売新聞」夕刊に4コママンガ『オフィス ケン太』を連載中)、蛭子能収(今やタレントとして有名)、古川益三(マンガ古書店の最大手「まんだらけ」の代表取締役)、この3人に共通するのは伝説のマンガ雑誌「ガロ」と関係があるということ。
古川は1969年に、蛭子は1973年に「ガロ」誌上でデビュー。
唐沢は1985年に他誌でデビュー後、1990年代に「ガロ」にも数度寄稿しているのだ。
そんなガロ系漫画家と縁が深い10月21日、まんが道を徘徊するあらゆる種類の人間が登場する『まんが家総進撃』第4巻を読もう!
『まんが極道』(全7巻)から続いた“漫画家便乱坊列伝”も、『まんが家総進撃』の第4巻をもってついに完結!
「これでおしまい!」「最終巻!」ということで、さまざまなかたちの“終わり”が描かれる(まあ、もともと老後やら介護やらのネタは多いですが)。
もちろん最終巻だからといって大団円など迎えられるはずはなく、意地汚く、不恰好に、ひたすらマンガにすがりついて朽ちてゆく漫画家や漫画家志望者たちの、愚かにもオモシロおかしい終焉のさまが赤裸々に描かれていく。
マンガにまつわる人間と、その尽き果てぬ所業を描いたこの作品。
とにかく、ツラい。
フリー稼業の身の上にとって、この作品は身につまされ過ぎてとても一気読みができない。
しかし、一旦置いた本をまたつかみ、ぱらぱらとページをめくらせてしまう呪いがこのマンガにはある。
何より、おもしろい。
見かけるたびにわずかずつ近づいてくる謎の男に悩む中堅作家、再単行本化のアテもない返却原稿に部屋を埋め尽くされるベテラン作家、病院のベッドのうえで人生の終焉を迎えつつある老境の漫画家などなど、最終巻も業の深いお話が続出!
いろいろあった名物キャラ・夢脳(ゆめのう)ララァは獄中生活を送って真人間に生まれ変わり、そして再びマンガへの情熱にその身を焦がし覚醒する。
まるで自らが発する炎に包まれ再生する火の鳥のように!
著者自身(をモデルにしたキャラクター)も躊躇せず、まな板の上に乗せて料理されるのもスゴイところ。 唐沢なをき似の安栗土地郎(あんぐり・とちろう)は生まれた子どものためせっせと稼がなくてはならないが、各社への持ちこみは蹴られ続け、仕事場のアシスタントにはウソの背景指示を出して時間稼ぎをし、きょうも明日も梱包剤のプチプチをつぶす毎日……とか、ツラい! ツラすぎる!
マンガ好きの小学生、オタク、持ちこみを続ける漫画家志望、売れっ子作家、底辺作家、ベテラン作家、マンガ雑誌の編集者、そしてマンガを読む読者。
マンガ好きであれば作品のどこかに必ず自分の姿を見出してしまう居心地の悪さと、同じまんが道を踏みしめる喜びが『まんが家総進撃』にはつまっているのだ。
ああ マンガがこの世にあって よかった!!!
<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。構成を担当した『てんとう虫コミックスアニメ版 映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』が発売中。4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。