このマンガがすごい!WEB

一覧へ戻る

11月1日は「犬の日」 『野望の王国』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/11/01


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

11月1日は犬の日。本日読むべきマンガは……。


YABOUnoOUKOKUkanzenban_s02

『野望の王国 完全版』 第2巻
雁屋哲(作) 由起賢二(画) 日本文芸社 ¥1,400+税


11月1日は、「1」を英語で読んでワン・ワン・ワンの「犬の日」。
1987年にペットフード工業会(現在は一般社団法人ペットフード協会)などが定めたもので、犬についてよく考え、より愛情を深めようという記念日だ。

ここでいう犬への愛情とは観念的な話ではない。
毎日何を食べさせ、どう運動させ、いつ休ませるのか、ペットは自分で選べないのだから飼い主がきちんと生活管理しようという、具体的な責任の果たしかたの問題だ。
それをふり返るきっかけとしての、「犬の日」なのである。

さて、今回はそれにちなみ、愛犬家のエピソードが印象深い作品を挙げてみよう。
『野望の王国』である。

「この世は荒野だ! 唯一野望を実行に移す者のみがこの荒野を制することができるのだ!!」

主人公は、そんな価値観を共有し、大衆を支配するための政治学を東大で身につけた橘征五郎(たちばな・せいごろう)とその親友・片岡仁(かたおか・じん)のコンビ。
神奈川県最大の暴力団・橘組の組長だった父が死に、関東の極道界に嵐が巻き起こると察した征五郎は、葬儀のすきにつけこんで腹違いの兄たちを次々と暗殺する。

唯一生き残って跡目をついだ兄・征二郎親分の指示に従うふりをしながら、同時に征五郎たちと同じ野望を公権力の側から実現しようとする警察庁キャリア組の柿崎にも協力して、ひそかに力を蓄えていく2人だが、ときに征二郎の器の大きさや柿崎の狂気的な実行力にふりまわされ、前途はつねに多難となる……。
衆愚社会と権力欲をリアルにとらえる純度が極まって逆に超現実的に突き抜けたバロックな世界観がやみつきになる逸品で、時期的には1970年代後半~80年代初期の劇画ブーム終焉期を飾った記念碑的作品でもある。

そんな本作に、疋矢(ひきや)という男が登場する。
彼の立場は、関西の頂点に立つ暴力団組織・花岡組の若衆頭。
征五郎が橘組に対抗する地元の暴力団を、関東と関西の板ばさみにしてつぶす陰謀を進めていたさい、関西サイドの圧力として利用した人物だ。

長いもみあげにオールバックの髪と口ヒゲ、サングラスという、いかにもヤクザの幹部然とした容貌だが、名刺を出せば「関西愛犬家協会 理事長」と書いてあるのがご愛嬌。
疋矢が無類の犬好きという情報をつかんだ征五郎は、実家で飼われている選りすぐりの名犬を持ち出し、偶然をよそおい通りがかってみせる。

その時、ドーンとページいっぱいに描かれるのは、仔牛をも上回る巨大なサイズのチャウチャウとアフガンハウンド。
疋矢はあわてて征五郎を呼び止め、犬たちを見せてもらってほれぼれする。

「ええ姿じゃ 気品がある
 王侯貴族の気高さみたいなもんを体中から発散させとる…
 こんなアフガンハウンドが日本におったとはのう……」

ここで犬をたたえる言葉をブツブツつぶやく疋矢の姿はまるでクスリをきめたか、あるいはオーガズムにでも達したかという感じで、“アヘ顔”の古典として歴史に記したい、イイ顔をしているので必見だ。

その後は、実家に名犬がまだたくさんいるという征五郎に釣られた疋矢が橘組を訪問し、征二郎親分と引き合わされて橘組の敵対組織を挟みうちにするレールにまんまとのせられる、という流れ。
橘兄弟を引き立たせる格下な役回りではあるが、巨大犬の威容と疋矢のウットリした姿があまりに強烈なため、むしろ彼のことが印象に焼きつく一幕となっている。

そんな彼の活躍(?)が収録されているのは、完全版でいうと第1巻の最後から第2巻にかけて。
本日「犬の日」に、ぜひ、この愛すべき犬好き極道キャラにも親しんでいただきたい。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

  • 『野望の王国 完全版』 第1巻 Amazonで購入
  • 『野望の王国 完全版』 第2巻 Amazonで購入
  • 『男組』 第1巻 Amazonで購入
  • 『サルまん サルでも描けるま… Amazonで購入

関連するオススメ記事!

アクセスランキング

3月の「このマンガがすごい!」WEBランキング