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『銀のスプーン』 第15巻 小沢真理 【日刊マンガガイド】

2016/11/10


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『銀のスプーン』


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『銀のスプーン』 第15巻
小沢真理 講談社 ¥562+税
(2016年10月13日発売)


季節は春。眉目秀麗で料理上手な主人公・律は大学3年になった。
弟の調、妹の奏もそれぞれ成長し、もうひとりの弟・ルカもつらい経験を乗り越えて、また愛らしい笑顔を見せるようになった。
就職活動を念頭に置きつつ映像関係のバイトを始めた律は、映画サークルの新入生・小日向はる菜と出会う。彼女は、律が父親の入院時に出会った、初恋の女の子によく似ていた。

はる菜は女子高育ちで、少々誤解されやすい面もあるものの、律に負けない料理上手ながんばり屋さんで、お相手には申しぶんのない女の子に思える。
高校時代からの律の友人である斉木、若月がある作戦を立てるが、その行方は?
今回もおいしいレシピがいっぱいだが、とくに女子寮で作る「フォーチュンクッキー」はなんとも楽しそうだった。

ガールズトークのなかで、はる菜は律を「透明感がすごくて……」と評するが、それは彼の人生がかかえる喪失感も影響しているのではないか。
律は老若男女問わず優しいが、裏を返せばだれにも執着を持てないともいえる。
調や奏、おまけにこじらせキャラだった斉木までもが壁を越えて青春を謳歌するなか、律の幸せは、そう簡単にもたらされるものではないようだ。
とはいえ、縁遠くなったあの人との、意外なかたちでの再会もあり、春めいたことはこの先もありそう?

律だけでなく、登場人物それぞれのドラマも厚みがある。
特に奏は、初期は兄の律に憧れるちょっとわがままな妹だったのが、学校や家庭でのできごとを通してずいぶん磨かれた印象だ。
頼もしい友人・ほとりを得て、ダンスに本気になった奏が従姉妹の環から迫られた新たな選択に、どんな答えを出すのか。彼女の踏み出すステップにも注目したい。



<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。

単行本情報

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