日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『メカ豆腐の復讐』
『メカ豆腐の復讐』
とり・みき イースト・プレス ¥1,080+税
(2016年10月14日発売)
2008年の短編集『ロボ道楽の逆襲』以降に描かれた短編ギャグ、エッセイ、トリビュートものなど、いわゆる「企画モノ」ばかりを集めた、じつに8年ぶりの単行本。
映画『シン・ゴジラ』パロディの表題作、週刊少年チャンピオン創刊40周年記念企画「クルクルくりんfeaturingるんるんカンパニー」、筒井康隆原作「わが良き狼(ウルフ)」、震災後の問題作「ダブル・ストーリー」「MightyTOPIO」など、約50作が収録されている。
一般に「企画もの」は、いわゆるオリジナル作品に比べると、オマケのよせ集めのような感じに軽視されがちだが、どっこい。大滝詠一におけるナイアガラCMスペシャルよろしく、キャッチーな間口の広さを持ちながら、マニアックな遊びや様々な実験が盛りこまれていて、じつにとり・みきらしい、マニアックかつバラエティに富んだ1冊となっている。
冒頭カラーの『メカ豆腐の復讐』は、ゴジラを豆腐に置き換えた時点でオチは明白だが、重箱の隅を突くようなオタクネタの応酬とひたすらナンセンスに徹した語り口がたまらない。
とり・みきをとりまくSF~ギャグ人脈のファンとしては、小松左京、米沢嘉博、吾妻ひでお、山上たつひこ、吉田戦車、加藤和彦……といった人々へのトリビュートマンガをまとめて読める幸せにジ~ン。
オカルトファン的には、スーパージャンプ連載「ヒバなろ! ~とり・みきの日本魔境ツアー~」もナニゲにツボ。
ぱっと開いたところからサクッと読めるようで、読み手の好奇心をくすぐる「知の扉」が幾重にも張り巡らされたレイヤー構造は、さすがというより他なし。
著者による「雑貨屋さんを楽しむような感じで読んでいただければ幸いです」という推薦文は、決して皮肉ではない。
絶好調連載中のヤマザキマリとの共著『プリニウス』で、とり・みきを知った初心者もぜひ!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69