『妄想高校教員 森下』第2巻
西渡槇 スクウェア・エニックス \533+税
(2014年7月25日発売)
妄想のおもしろさとは、現実とのギャップ。
あんなにまじめな人が、じつはそんな願望や欲望を隠していたのか……という驚きがポイントだ。
本作の主人公は、ダンディで貫録たっぷりな、春麻女子高等学校2年3組の担任教員・森下。勤勉で仕事熱心な先生なのだが、生徒たちに対する愛が強すぎるがゆえ、生徒たちから自分に対する愛情も過信しすぎ、ついあれこれと、期待を込めて危ない妄想を……!
たとえば第1巻では、袖のボタンが取れたとなったら、学級委員長の中島美咲がボタンを付けてくれ、「……ふふ こうしていると先生と生徒というより夫婦みたいですね いっそのことなってしまいませんか 本物の……夫婦に」と結婚を迫ってくるのでは……などなど。
教員と生徒なんて、倫理的にもヤバイものだが、森下のドラマティックでマンガチックな直球の妄想は、倫理的というより、人間的にヤバイ!?
最新刊2巻では、生徒たちが体育祭を翌日に控え、チアガールに扮してはしゃぐなか、応援団としてひとりだけ学ランに身を包むボーイッシュな少女・久保さやかが顔を曇らせているのを見た森下のエピソードに笑わせられる。
森下はさやかを見て、「本当はチアガールをやりたいのではないか……!?」と考えこむ。深夜、全身タイツで変装して教室に忍び込み、置いてあったさやかの学ランをチア衣装とチェンジする森下。そこにさやがきて……と妄想が始まるのだが、全身タイツで忍び込んだのは現実の話!! 森下先生、完全に変質者の域!
絶妙なのが、森下先生自体は真面目で真剣そのものというところ。基本は生徒思い。妄想においても、あくまで自分は教師だからと生徒と一線は引こうとしていて……。
って、それなのに言い寄られて拒めないというシチュエーションを思い描いているあたり、よけいに闇が深いというか、「病み」が深いというか。
女生徒たちのかわいさでも男性読者は楽しめるだろうが、中学生男子レベルの妄想を繰り返す森下先生も、なんだかかわいらしく見えてくる、不思議な一作だ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Summer」が発売中。DVD&Blu-ray『一週間フレンズ。』ブックレットも手掛けています。