日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『BOX~箱の中に何かいる~』
『BOX~箱の中に何かいる~』 第1巻
諸星大二郎 講談社 ¥570+税
(2016年11月22日発売)
鬼才・諸星大二郎の最新作は、ソリッド・シチュエーションホラー。
「そんなもん、おもしろいに決まってるじゃないですか~」とニヤニヤしながら読み進めると、予想のナナメ上をいく諸星テイストで、さらにニヤニヤが止まりません!
物語は高校2年生の光二のもとに、差出人不明の小包が届くところから始まる。
中身は複雑なカラクリで知られる箱根細工の秘密箱と「入場券」と書かれた紙片だった。
翌日、光二が教室のなかで秘密箱を開けることに成功すると、奇妙な出来事が起こり始める。
やがて導かれるように無機質な建物にたどりついた光二の前には、彼と同じように立方体や四角に関するパズルと入場券を手にした人々の姿が……
外界からシャットアウトされた空間で、見知らぬ老若男女が互いの素性や思惑を探りつつ、協力して状況打破を目指すという展開自体は、手あかがつきまくった設定だ。
しかし、ここに諸星流怪奇がまぶされると、とたんに新しくなるからすごい。
パズル自体は迷路やクロスワードで、難易度は高くとも答えのあるアナログなものであり、解ける解けないのハラドキには力点が置かれていない。
それよりも、パズルを解くごとに参加者を襲う面妖な事象こそがキモとなる。
どうやら彼らが訪れた建物は、昔から様々な文献に残っている“マヨヒガ”(訪れた者に富をもたらすとされる幻の家)の可能性も?
唯一の部外者で、強引に参戦した謎の美女・キョウコがキーパーソンとなりそう。
彼女は単なる野次馬ではなく、なんらかの秘密を知ったうえで行動していることが中盤で示唆される。
じつはこのキョウコ、諸星の初小説集『キョウコのキョウは恐怖の恐』に収録された3本の作品に登場する女性だということが巻末の「キョウコのこと」で明かされる。凶子、恐子、狂子と表記は異なるが、「それぞれ別人なのか、それとも一人の人間が名前を使い分けているのか、そのへんははっきり設定していません」とのこと。
だが、本作に登場する「興子」が、凶子、恐子、狂子の延長線上にいるキョウコであることはたしかだ。
第1巻終了時点ではゲームの主催者がだれで、目的はどこにあるのか、見当もつかない。
今後は参加者たちの秘密や思惑が少しずつ露呈しながら、物語は核心に近づいていくことだろう。
箱のなかの“何か”がなんなのか、早く知りたい!
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口を凌ぐライター。