日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『くじらの御仕立さん』
『くじらの御仕立さん』
灼 一迅社 ¥680+税
(2017年1月13日発売)
無骨な煎餅(せんべい)をがりがり食べるのは楽しいものだ。
歯ごたえと深い味わい。少々噛むのに難儀するのもまた醍醐味だ。
この『くじらの御仕立さん』は、いってみればそんな硬い煎餅のような作品かもしれない。
主役となる男たちがみごとなまでに不器用で、言葉も態度もごつごつとした、本音を隠すことにやけに年季の入った2人なのだ。
老舗仕立屋の跡継ぎである葉之介(ようのすけ)と鈴成(すずなり)。
葉之介は和服の仕立屋である和裁士、一方お向かいに住む鈴成はテーラー、洋裁である。
祖父の代から腐れ縁の家同士だが、この葉之介と鈴成は、寄ると触るとケンカをしている。
だがある日、葉之介に見合い話が持ちこまれて――。
男たちの葛藤がていねいに描かれた、なかなかに味わい深い本作。
登場人物も比較的多く、読み進めていくにはじっくりと読みこむことが必須だが、そのテンポがこの物語には合っているように思う。
恋愛感情がはっきり外に出ない反面、わかりやすいケンカップルでもある2人なので、その路線が好きな人にはおすすめだ。
またスーツと和装もたくさん出てくるので、フォーマル好きな人もぜひどうぞ。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」