365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
2月1日はモンゴル帝国使節が来日した日。本日読むべきマンガは……。
『アンゴルモア 元寇合戦記』 第1巻
たかぎ七彦 KADOKAWA ¥580+税
鎌倉期に書かれた史書『五代帝王物語』によれば、旧暦の文永5年1月17日つまり1268年2月1日、中央アジアに端を発するモンゴル帝国の使者が通交を求めて来日したという。正確には、これは当時帝国の官吏を務めていた高麗人の情報提供を受けての派遣だった。
日本は当時鎌倉幕府が政権を掌握していたが、源氏の頭領は源実朝が甥の公暁に殺されて以来絶えており、実質的に政務を取っていたのは執権の北条氏だった。
国交担当の朝廷に国書を転送し、対策を評議するかたわらで幕府は「蒙古人は凶心を挿(はさ)んで」日本を狙っているとして、御家人に警戒をうながした(『新式目』より)。
結果的に日本側がスルーしたかたちで使節派遣は失敗に終わったため、怒ったクビライは属国化している高麗に軍兵1万人と戦艦1,000艘の供出を命じ、これがひいては1274年の第一次日本侵攻計画すなわち「元寇」につながっていくわけだ。「元」というのは、モンゴル帝国が1271年に改めた国号である。
「文永の役」と呼ばれる第一次侵攻計画で採用された侵攻ルートは対馬。上陸したおよそ1,000人の元軍に対し、対馬守護代・宗助国(そう・すけくに)が率いるのはわずか80余騎で、彼らは善戦むなしく壊滅状態となった。
この戦いを、対馬に流刑された鎌倉武士の視点から描いたマンガが、『アンゴルモア 元寇合戦記』である。
鎌倉幕府によって流罪となった元御家人・朽井迅三郎(くちい・じんざぶろう)らは、嵐の海を渡り対馬にたどり着く。
彼らは、宗助国の娘・輝日姫(てるひひめ)から蒙古・高麗軍が高麗から日本に向かっていると知らされる。
さらには姫から「対馬のために死んでくれ」と告げられ、圧倒的に不利な状況のなか迅三郎たちは、わずかな手勢とともに蒙古・高麗の大軍を迎え撃つ。
表題にある「アンゴルモア(Angolmois)」は、ノストラダムスの『予言集』百詩篇第10巻72番に登場する言葉で、
「1999年7か月、
空から恐怖の大王が来るだろう、
アンゴルモアの大王を蘇らせ、
マルスの前後に首尾よく支配するために。」
という不気味な“予言”で有名になったもの。迅三郎らにとっては元軍はまさに“恐怖の大王”というわけだ。
当初はフランス中西部の一地方「アングーモワ」と考えられたアンゴルモアは、20世紀半ばになって「モンゴルのアナグラム(もじり)」という解釈がなされ、本作のタイトルに冠されたのだろう。
最新第7巻はまもなく発売予定で、『このマンガがすごい!2016』オトコ編にもランクインし、当サイトでも「日刊マンガガイド」をはじめ「スペシャルインタビュー」などでも取りあげられる超人気作品。ぜひご一読いただきたい!
<文・富士見大>
モンゴル/元と言えばPCゲーム『蒼き狼と白き牝鹿』を思い出す、オルド大好き編集・ライター。特撮のあれこれやマンガのあれこれに携わり、最近作は『「仮面ライダー」超解析 平成ライダー新世紀』、『「ウルトラマン超解析」大怪獣激闘ヒストリー!』。間もなく発売の「東映ヒーローMAX Vol.55」にも参加しています。