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【日刊マンガガイド】『アサギロ ~浅葱狼~』第10巻 ヒラマツ・ミノル

2014/08/26


ASAGIRO_s10

『アサギロ~浅葱狼~』第10巻
ヒラマツ・ミノル 小学館 \457+税
(2014年8月12日発売)


作者ヒラマツ・ミノルの画風は、とにかく“濃い”。主線は太く、アメコミ的なバタくささと劇画的なアクションの迫力を兼ね備えている。
これまで『REGGIE』や『ヨリが跳ぶ』、『アグネス仮面』など、スポーツマンガを青年誌で描いてきた作者が、少年誌で歴史モノにチャレンジしたのが『アサギロ ~浅葱狼~』だ。

本作は新選組・沖田総司を主人公とする幕末群像劇である。
「新選組モノ」は、近年ではアニメや乙女ゲーム、BLなどで、耽美的な絵柄で描かれることが多く、それはそれで楽しみどころは多いが、一方で本格派の史劇が少なくなっているのは事実。そんな風潮のなか、ひさしぶりに登場した骨太な時代劇マンガといえるだろう。
作者ならではの泥くささと凄惨さは、動乱の幕末期の“血生ぐさい風”をリアルに感じさせてくれる。小学館「ゲッサン」の創刊号から好評を博し、ついに単行本が10巻に到達した。

今巻では、江戸をたった総司ら浪士組が、ようやく京に到着する。
芹沢鴨の狂気が炸裂し、それに呼応するかのように近藤勇の存在感が増し、さらには幕末を駆け抜けた英雄たちが次々と登場……と、群像劇らしい多様な賑やかさを見せてくれるのだ。
ともすれば主人公・総司の影が薄くなりがちな展開だが、そこは修羅場でひとり別格のふるまいをして、総司の天稟(てんぴん)を印象づけるのが心憎い。
試衛館の面々は1~9巻を通じてエピソードを綿々と積み重ね、ハッキリとキャラ立ちしているがゆえに、1コマ登場するだけ、ひと言しゃべるだけでも、その人物像が浮かび上がる。すでに群像劇としては、かなり高次に達している証左だ。

入京後の試衛館メンバーは、壬生浪士組を経て新選組を結成し、いよいよ歴史の表舞台で活躍する。ここから見せ場が続いていくはずだ。
この本格時代群像劇を追いかけるには、いま既刊を振り返るのがベストタイミングである。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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