365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
3月1日はファミリーマートがエーエム・ピーエム・ジャパンを吸収合併した日。本日読むべきマンガは……。
『ニア アンダーセブン』 第2巻
安倍吉俊+gK KADOKAWA ¥600+税
コンビニエンスストアチェーン「am/pm」を覚えているだろうか?
アメリカからライセンスを取得したエーエム・ピーエム・ジャパンが事業展開し、オレンジと紫の看板が目印で、日本独自のサービスや商品もあった。おいしくてお手頃価格のフローズンヨーグルトも夏の人気商品で、数年前まではいたるところにあったコンビニだ。
しかし、2010年3月1日付けで、すでにam/pmを完全子会社化していたファミリーマートに吸収合併され、翌年2011年12月10日には最後の2店舗も閉鎖、日本からは消滅したのである。
安倍吉俊の日常SFスラプスティックコメディ『ニア アンダーセブン』の愛読者としては、いろいろな意味でさみしいニュースであった。
近未来、突然宇宙人が移住してきた日本のなかでも、沖に宇宙船が浮かび、まるでスラムのように雑然とした東京都荏ノ嶋区・荏の花地区。ややさびれ気味の町である。
浪人生のまゆ子と宇宙人のなかでもランクの低いニアは、なぜか同居している。貧乏で日々の食べ物にも困る生活だが、第4話で荏の花に憧れのコンビニができると聞き、喜び勇んで行くと『amイレブンpmセブン』というギリギリな店名が! もちろん、営業時間もそのとおり……って、それはコンビニなのか?
正確に いえば「コンビニ」ですらなく、「コソビニ」である(理由は、読んでのお楽しみである……腰が砕けそうになるが)。しかも店主のインド風宇宙人・チャダはまっとうな商品を置かず「本場インドのガンジスウォーター(生きて腸まで届く)」など、とんでもないものを販売し、2人を大いに疲弊させるのであった。
しかし、このネタもコンビニ「am/pm」があってこそだ。連載開始は1999年だが、当時はまさかブランド消滅とは想像すらできなかった。
今やコンビニは都会の象徴というよりも、インフラとして切実な施設になりつつあり、ファミリーマートは近年さらにサークルKサンクス(これももともと「サークルK」と「サンクス」だった)をも経営統合し、業界1位のセブンイレブンに追随しようとしているもようで、コンビニも画一化の道を進みそうだ。
『ニア アンダーセブン』はハイテンションなギャグ満載だが、終盤には、ふと姿を消すニア、突然大きな変化を遂げる宇宙船など寂寥感がにじんでくる。
それでも、まゆ子は前向きに毎日精一杯生きよう、と決心する。大切な場所がもしなくなっても、思い出すために。
「am/pm」がまだ日本のあちこちにあった風景を、懐かしんでみるのも悪くない。
<文・和智永妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。