日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『てんちょう、ダメ、絶対』
『てんちょう、ダメ、絶対』 第1巻
柴なつみ 集英社 ¥440+税
(2017年2月24日発売)
雪の降る夜、住宅地の片隅でダンボールをまといながら震えている女子大生がいた。
彼女の名は七森結(ななもり・ゆい)。
酔っ払ってスマホをトイレに落とし、財布を路上に落とし、あげくの果てにはスカートを電柱のでっぱりに引っかけてビリビリに。
そんな彼女の前に現れた王子様ならぬ“おじさま”。
着ていたコートを黙って手渡し、お弁当まで差し出してくれるダンディぶり。
しかもそのまま、ひと言も発することなく去ってしまった。
もともと大の“おじさま”好きで、阿部寛とコリン・ファースの大ファン。
付き合うなら男らしくて誠実な中年紳士と決めている結は、運命の“おじさま”を探すべく、お弁当の箸袋に書いてあった店へ突撃する。そこにはあのダンディな“おじさま”の姿が。
「てんちょう」と呼ばれている彼の正体は、お弁当屋さんの店長?
てな調子で軽快に幕を開けるラブコメなのだが、じつはこの作品、流行りの年の差モノではないのだ。ネタバレになるので詳細は伏せるが、見た目と中身のギャップモノである。
表紙を見ていただければおわかりの通り、『北斗の拳』や『魁!!男塾』に出てきそうなルックスの“てんちょう”だが、じつはバイオレンスとは無縁の心優しい男。
しかも女の子と話すのが大の苦手なシャイボーイなのだ。
21歳にしていまだ男性と付き合った経験のない結としては、グイグイ引っ張ってくれる大人の“おじさま”が理想なのだが、この弁当屋でバイトをすることになり、いっしょに仕事をする中で“てんちょう”が見せる仕草や言葉にキュ~ンと胸を締め付けられることに。
著者の柴なつみは本作がコミックスデビューとなる新鋭だが、キレキレのセリフとコマ運びが秀逸で、何度も大笑いしてしまった。
終盤には結の恋敵となりそうな昭和大好き女子も登場して波乱要素が増幅し、ますます目が離せない!
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。