人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、かわかみじゅんこ先生!
好きな人に素直になれない少年・晶と、まわりに流されて生きてきた危なっかしい女教師・聖の恋愛を描いた『中学聖日記』。昨年の『このマンガがすごい!2017』オンナ編にランクインした話題作ですが、今月10月には最新第3巻が発売され、ますます話題となっています。
今回、そんな『中学聖日記』の著者・かわかみじゅんこ先生に作品のお話をいろいろとうかがっちゃいました! 知られざる、かわかみ先生の過去が明らかに……!?
<インタビュー第1弾も要チェック!>
【インタビュー】かわかみじゅんこ『中学聖日記』14歳の男子中学生と女教師の“禁断の恋”…… 著者が今後描きたいのは「ガチな●●シーン」!!
マンガ好きのご近所さんや友人に恵まれた子ども時代
――かわかみ先生は、子どもの頃からどんなマンガを読んできたのでしょうか。
かわかみ 小さい頃家にあったのが手塚先生の『火の鳥』、ちばてつや先生の『島っ子』『おれは鉄兵』で、めちゃめちゃ読みこみました。
――いきなり名作古典から! いい環境ですねぇ。
かわかみ 小学生の頃は「なかよし」派で、竹本泉先生が男性と知ってさらにファンになりました。それから近所にマンガ好きなおばさんがいて……家がマンガ図書館みたいになっているんですよ。『ガラスの仮面』や『ガラスの城』を貸してくれました。特に『ガラスの城』は何度も借りた記憶があります。
――わたなべまさこ先生の『ガラスの城』! 60年代末~70年代にかけて連載された、これも少女マンガの隠れた名作ですね。
かわかみ ラスト、お父様がじつは生きていて、マリサを助けに現れるシーンの高揚感は忘れられません。あと川原由美子先生の表紙の時の「少女コミック」は、おこづかいが足りなくて買えなかったのですが書店でガン見してました。縛られた上から。
――『すくらんぶるゲーム』とか『前略・ミルクハウス』の頃ですかね……。執念を感じます(笑)。
かわかみ 中学の頃はマンガ好きな先輩が「ファンロード」とか貸してくれて。アニメ雑誌をオタク友だちと分担して買ったり。『ナウシカ』でみんなが盛りあがってるのに何を思ったか『少年ケニヤ』のほうを観にいったり。絵に描いたような……。
――当時はまだアニメ映画を観に行く女子は少なく、「ナウシカ」ですら少数派だったと思いますが、さらにハードルの高いところに行ってます(笑)。その思い入れが、のちの『少女ケニヤ』というタイトルにつながるわけですね。
かわかみ 上條先生の『To-y』や紡木たく先生の『ホットロード』が流行って、普通の子やヤンキーの子とも会話の接点ができました。あと清水玲子先生の「ジャックとエレナ」シリーズは、勉強を教えてくれていた高校生のお姉さんがファンで貸してくれて。はまりました。
――マンガと友人づきあいがめっちゃうまいこと働いてるじゃないですか。
かわかみ 萩尾先生の作品との出会いも中学時代だったと思います。最初に読んだのは『トーマの心臓』でした。なんか、これは10代のうちに読んどかないとやばいらしい!って、なにかで読んで。
――すばらしい……順調に育ってますね!
かわかみ 高校の頃はマンガ好きを必死に隠してましたがバレてたと思います。萩尾先生の『マージナル』や山岸先生の『日出処の天子』を読んで「ホアー!」ってなってました。前述のマンガ好きのおばさんにも「じゅんちゃん、いいの読んでるわね」って言われて逆に貸してあげたり。必死にレベル上げてました。そのあとは専門学校がデザイン系だったので、わりとみんなマンガ好きで、青年誌をまわし読みしていました。山田芳裕先生と、ジョージ秋山先生の『ラブリン・モンロー』がすごかったのを覚えています。あとはBLですね。中高、20代前半までは、同人誌をいっぱいタンスに隠してました。
――そうとう幅広く読んでますね。今もマンガは読んでますか?
かわかみ はい。最近では、押見修造さんの『ぼくは麻理のなか』がおもしろかったです。止まらなくて一気読みしました。
中学生の頃にはプロ志望。1話分まるまる模写をした作品は……!?
――マンガを描き始めたのはいつ頃ですか?
かわかみ 鉛筆ノートマンガは小学生の頃から書いてました。タイムトリップものとか、異次元ぽいものが多かったです。ペン軸とペン先でちゃんと仕上げたのは中学生になってからでしたね。中学生の頃には「なかよし」に投稿しました。当時、同い年でかなりいいところまでいっている投稿者さんがいて、ライバル心を燃やしたのですが、結果は「選外B」でした。
――すでにその頃にはプロ志望だったのでしょうか。
かわかみ 中学生の時に「25歳になった自分」みたいな作文のテーマが出て、「さすがに漫画家になっているだろうと思うので」みたいな高飛車な作文を書いたらクラス全員の前で読まされました。恥ずかしかった記憶しかありません。
――こうしてマンガ読書歴をうかがうと、腑に落ちるところがあります。かわかみ先生がデビューされた頃、少女マンガのニューウェーブ的な雰囲気と、古きよきマンガらしさ……いい意味で大衆的なマンガの両方を兼ね備えた作風とで、鮮烈な印象を受けました。当時「こういうマンガ家になりたい」と意識されていたことはありますか?
かわかみ 当時は世界中にモテたいぐらいは思ってたかもしれません。若いってすばらしいなと思います(笑)。
――初単行本の『少女ケニヤ』が出たとき、周囲のマンガ好きの間でかなり話題になりました。ご自身でもこの頃、マンガ家として手ごたえを得ていたのでは。
かわかみ 『少女ケニヤ』に収録されている一連の女子高生ものを描いたのは、デビューしてしばらく経ってからだったんですけど、パッと目の前が開けたように感じました。そのあとまたすぐ閉じますけど……。
――かなり幅広くマンガを読んでいらっしゃいますが、影響を受けたと思う漫画家さんを挙げるなら?
かわかみ 数えきれないぐらいの作家さんの影響を受けていると思いますが、小学生の時に包装紙の裏に模写したのは原ちえこ先生の『フォスティーヌ』、中学生の頃ノートに1話分完全模写をしたのは、白倉由美先生の『セーラー服で一晩中』です。
――『セーラー服で一晩中』! これまた納得するというか。あの、女性作家らしい絵なのに少年誌に発表されたのがわかる生々しさと繊細さのバランス、どこか通ずるものを感じます。ストーリーはどのようにつくりあげていきますか?
かわかみ 昔は描きたいヤマ場シーンが頭に浮かんで、それに向かってお話をつくりあげていく感じでした。最近は少し違うかもしれません。考えるのが遅いので、ネーム中はすごく辛いです。なのでそのあと作画に入ったらもうご褒美タイムですね。楽しいお絵かきの時間です。あとは時間との戦いが待ってますが……。
――『パリパリ伝説』も並行して描かれてますしね。赤子ちゃんもすっかり大きくなって……こちらもかなりの長期連載になりましたが、ネタに苦労することはありませんか?
かわかみ あります。フランス生活にも慣れてきたので、読者さんからみて新鮮に思えることを探すのが難しいです。あまり外にも出ないし。というわけでこれから景気づけに薪を割ります。
――そういうところが新鮮です(笑)。フランスに移住してよかったと思うのは?
かわかみ フランスが舞台のマンガを描けたのはよかったです。あとゴキブリがあんまりいないことでしょうか。
――『パリの鈴木家』は当初ベルギーで出版され、のちに日本に逆輸入される形になったんでしたね。この作品は「海外マンガ」として、外務省主催の「第7回国際漫画賞」にも入賞されていますが。これからの目標がありましたら教えてください。
かわかみ 目が悪くなったので視力を回復することと、何年も前から言ってますが、デジタルをもう少しとりいれたいです。本当です!