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【インタビュー】林良時『まかいたいしコココちゃん』巨匠たちからの大きな影響と、「肯定的な話」を生み出すための手法とは?

2018/01/07


宮崎駿の言葉に影響を受けた“肯定的なスタンス”

――ひとりでマンガを研究して描くようになって、その後は投稿を始めたり?

 初めて「週刊少年ジャンプ」に持ちこみしたのは19歳のときです。この頃は全然相手にされなかった覚えがありますね。「ジャンプ」だけでなくほかの少年誌にもせっせと持ちこみに行きましたけど。

――強いですね。この過程で心が折れる人も多いようですが。

 あれはキツいですよ。編集さんが目の前で1枚2枚読んで……そのあとはすごいスピードでざ〜っと見ていくので、興味を持たれてないのが丸わかりなんです。ひととおり目を通してからおそろしく基本的なことを注意されて「また描いたら持ってきてください」と……。くやしいというより、やるせなかったですね。

――それをくり返しながらどのようにステップアップしていったのでしょうか。

 マンガを読むときに描き手として、研究する視点で読むようにしていました。コマ割りやセリフ、構図など。当所はどこにフキダシを置いたらいいかで悩んだりもしましたから。他人の作品を見て、なんでこの人のマンガはこんなに見やすいんだろうと考えたり。マンガだけではなくアニメ、映画、小説も……それまで創作物というものにほとんど触れてなかったので、意図的に勉強するつもりで。児童文学も好きになりました。子どもの頃には読まなかったのに。ケストナーの作品、特に『飛ぶ教室』『エーミールと探偵たち』が大好きです。

――その時期、特に栄養になったと思うのは?

 触れたもの全部ですが、あえて挙げるなら宮崎駿さんの影響は大きいと思います。こういえるほどのものをつくれているかはわかりませんが。

――その成分は感じます。具体的にはどんなところに影響を受けたと思いますか?

 何かで読んだ宮崎さんの言葉に「肯定的な話を作りたい」というのがあって、これはすごく心に残っています。「この世はもうだめだ」みたいなニヒリズムから生まれる作品もあるけど、宮崎さんとしてはそれをいっちゃおしまいだと。「この世を肯定できなかったら作品を作るべきではない」みたいな言葉だったと。絵や表現もですが、こうしたスタンスには大きく影響されていると思います。

――そのほかに、どんな作品が研究対象になっていましたか?

 やっぱり絵がうまい人ですね。鳥山明先生や、大友克洋先生など。デビュー後にアシスタントとしてお世話になった『青の祓魔師』の加藤和恵先生はじめ、挙げたらキリがないですが……。自分のマンガはセリフばっかりだなと思ったとき、「あだち充はセリフが少ない」と聞いてすぐに買って読んで、セリフが少なくても成立している理由を研究したりしました。

――今の林先生のマンガは、セリフは最小限ですよね。セリフを排してサイレントっぽく見せるシーンも得意なのでは? 説明的なモノローグもないですし。

 そこはマンガの教科書でも極力使わないようにと書いてありましたね。設定をつくりこむと言葉で説明したくなっちゃうのを、こらえて……。方法がわからなくなったら、ほかの人のマンガを見て解消法を探すのは今でもやりますよ。

――現在、いち読者として楽しみにしている作品は?

 『ヴィンランド・サガ』ですかね。『それでも町は廻っている』が終わってしまったのが残念! それから、なかなか出ない『よつばと!』の新刊をじっと待っています(笑)。

――デビューから10年、いよいよ単行本が刊行になって。これからのマンガ家としての目標を教えてください。

 おもしろいものをつくっていきたいということに尽きます。「これを読んでたらカッコいい」「常識だから読んでおく」といった下心とは関係なく、純粋に読まずにいられないような作品を。『ドラゴンボール』にのめりこんだ小学生の自分、一度はマンガを卒業したはずの高校生の自分が吸い寄せられたような作品を目指していきたいと思います。

取材・構成:粟生こずえ

<インタビュー第1弾も要チェック!>
【インタビュー】林良時『まかいたいしコココちゃん』「最後の挑戦として、自分が本当におもしろいと思える作品を」!。王道ファンタジーを生み出す原動力に迫る!!

単行本情報

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