2人の会話は、テンポがよいかどうかを気にかけています。
――2人のキャラクター設定がまた、絶妙ですよね。相沢さんはみんなが声をかけるのをためらうほどの美少女なのに、じつはシャイで不器用で、東くんのことが好きすぎてストーカーに走ってしまう愛すべき天然キャラで。東くんも見た目は学級委員タイプで、実際かなり冗談が通じなくて女の子にいいにくいこともズバズバいってしまうのですが、そんな生まじめな直球さが最高におかしくて、相沢さんでなくともキュンとさせられます。
ろびこ 主人公2人に関しては、今回は「男女が互いの違いを討論する」というマンガなので、それぞれが男性と女性の代表となるように、自分のなかの女/男像を最大イメージ化したキャラクターになりました。
たとえば、相沢さんは見た目はいわゆる女の子らしいんだけど、感情豊かで優しくて妙に現実的なところもある。基本的に女の子のかわいいなあと思うところを描いてるつもりなんですが、だいたいそれって女の子のめんどくささとセットなんですけれどね。東くんの「理屈っぽくて女子の感情があまり通じなくて趣味や好きなものには熱く語る」というキャラクターも、私のなかの勝手な男性のイメージをデフォルメしたものです。タイプかといわれるとわかりませんが、あれこれ話せるのでつきあったら楽しそうですよね。
――東くんは現実的な女性経験は乏しそうなんですが、彼の女性観が「美味いもの、流行の場所、濃すぎないロマンチックがあればいいんだろう!」とか、辛辣だけど鋭くって最高です!
ろびこ ありがとうございます(笑)。私も東くんの「女の女による女のための断罪裁判 被告人は不在でな!!」っていうセリフはいちばんのお気に入りです(笑)。彼のそういう女性観は、たぶん東くんの女性観は叔母4人によるもので。女性4人の口さがないやりとりを感受性の強い男の子が間近で見て育ったら、こうなったという(笑)。そのへんは今後、物語のなかで描くかもしれません。
――「男は達成感が好きな生き物だから差し出されたものには満足しない」ということを、わざわざポケットキングダムカードを例にくどくどしく説明したり、ネタや視点のおもしろさだけでなく、会話自体も長台詞のなかにいちいち細かいネタが仕込まれていて、このままドラマ化できそうなおもしろさです。
ろびこ 思いつくままに描いているだけなので、特にこだわりはないんですよ。ただ、読んでいてリズムに乗ってるかな? というのは気にしてますね。ここのセリフはこの一文があるとテンポが悪いし削ろう、とか。以前、担当さんに「あなたはテンポ(でネームを描く)の人だ」といわれたことがあるんですけど、たしかにそうだなと思います。
――恋愛マンガという観点でいうと、かみあわない会話を続けながらも、次第に距離を縮めてゆく2人の姿が微笑ましく、キュンとさせられます。話せば話すほど「違い」が露呈していくのに、不思議と2人の関係性は深まっていくのがおもしろいところですよね。
ろびこ 「男性は視覚で恋をして、女性は耳で恋をする」というのをなにかで聞いたことあるんですが、やっぱり女の子にとって会話ってすごく楽しいし、恋愛を育む上でも大事なんですよね。たぶん、人と関係を築くのに「違い」自体はそれほど問題ではないのかなって。受け止めかたが違うところに齟齬が生じたりするだけで、そこを埋める手段のひとつに言葉があるのかなと。言葉があるから争いが起こったりもするわけですし、難しいですけど……。
――「たとえば僕と君が違う星の人間だとして それをつなぐのは言葉だろう」という台詞もでてきますが、まさにそのとおりですね!
ろびこ よく思春期の男女にとって異性は宇宙人と同じくらい遠くて理解不可能な存在だといいますが、それぐらい思考が違っても、唯一取れるコミュニケーションツールは言葉なのだから、話ししてみようよってね(笑)。
自分にとっておもしろいかどうかが大事
――「ラブコメ」という観点で、特に意識されたことはありますか?
ろびこ どうでしょうね。いつも「これを読んだ時の自分」を想定読者に置いているので、描いてる時も「これおもしろいな、なんか笑えるな」とは思って描きますが、読んだ人を笑わせようとは思っていないかも。昔から読み手として、あまり重くない、少し笑えるくらいの少女マンガが好きだったので、自然にこうなってるんでしょうね。
取材・構成:井口啓子
■次回予告
次回のインタビューでは、【インタビュー】ろびこ『僕と君の大切な話』 裏時代設定は大正時代!? サブキャラクターへの思いや、映画『となりの怪物くん』の見どころを著者ろびこ先生が語る!
インタビュー第2弾は4月27日(金)公開予定です! お楽しみに!