作中に登場する文字の秘密を大解明!
――作中に出てくる文字が、50音と対応していますね。第2巻でピオランがフシに文字を教えるシーンなどから類推すると、母音と子音の組みあわせで構成されている文字だな、と。
大今 そうです。ワ行だけ不規則な感じですかね?
――それで思ったんですけど、ひょっとして手話と関連があったりします?
大今 ああ~。
――『聲の形』の大今先生が描かれているわけだから、もしかしたらそうなのかな、と。
大今 じつはですね……。
――はい。
大今 ……関係ないんです。
――ないのかぁ(笑)。
大今 これは「音をかたちにしたらこんな感じかな?」と考えてつくりました。
――こういうのを考えるのは、性分というか、お好きなんですね。
大今 ああ、たぶん好きです(笑)。もっと考えたいです。
――50音表をつくって最初から読み直すと、いろいろと発見があります。
大今 デザイナーさんにフォントをつくってもらったり、コミックスで各話のあいだに入る追加ページの文字は、コミックス担当の字が綺麗な方に書いてもらったりしています。
――コミックスのカバーをめくると、ここに「わ・す・れ・な・い・よ・う・に(忘れないように)」って書かれていますよね?
大今 そうです。
――これは第1話の少年の家の壁に似ていますけど、巻数によって人数が増えたり減ったりするので、フシの記憶ということでいいんですよね?
大今 そうですよ、これは「フシが忘れたくない人たち」。
マーチのセリフから考えさせられる「大人になること」の意味
――いろいろなキャラクターが出てきていますが、そのなかで先生のお気に入りのキャラっています?
大今 いやぁ、これといってとくに……。でも、マーチを描くのはすごく楽しいですね。ちっちゃいから画面に収まってくれるんですよ。
――『このマンガがすごい!2018』本誌でも、「お気に入りのシーン」として、マーチが牢屋の格子や小窓に挟まっているコマを選んでましたね。
大今 私の性癖なのかなぁ……。小さい子が挟まってたり、閉じこめられていたりするのが、すごく好きなんです。あの、中国でよく子どもが狭い場所にはさまるニュースがあるじゃないですか。
――ありますね! 中国の子どもはよく坑道とかに挟まってますね!
大今 ああいうニュースがすごい気になっちゃうんです。
――丸いものがお好きですか?
大今 それはありますね。『聲の形』だと、永束はすごく描きやすかった。
――マーチ、お好きなんですね。第2巻でマーチが「大人になるってしっていくってことでしょ?」というじゃないですか。
大今 ええ。
――あのセリフに「うーん、そうなのかぁ……」って感じいっちゃって。
大今 そうなんですか?(笑)
――その「知ったこと」が敵に奪われてしまったり、あるいは忘れてしまったりする話も描かれるわけじゃないですか。だから「知る=成長」かというと、一概にそうとはいえない描かれ方がされている。でも少年マンガって、基本的に「成長」がテーマになりますよね?
大今 そうですね。ただ奪われることだって忘れることだって、そうして初めて知ることもあるんだと思うんです。ですからそこに関しては、すごく慎重にやっていきたいですね。わかりやすく表現したい場合には「成長」という言葉を使いますけど、極力「変化」というようにしています。特に観察者は。「進化」もなかなか使えないですね。
――フシの行動原理って、なんでしょう?
大今 そこも成長過程とともに一個ずつ積み重ねていくつもりです。第1巻の時点では、自分で行動するというよりは、餌付けされて飼い主のところに戻っている……みたいな感じでしたからね。
――動かすのたいへんでした?
大今 そう、最初はすごくたいへんでした。少年マンガ的にいえば「マーチを助けにいった」で済むところを、まず餌付けされて、においを追っていってマーチのところに行きついて、結果的に「マーチを助けた」という見え方にならないといけない。すごく難しかったです。
――今は?
大今 もう自我がしっかりあるので、もう普通の主人公と変わらないようになってきていますね。なので今後は、フシがあれやりたい、これやりたい、というのを基準に行動していくと思います。
――フシは不死身なので、常に「残される側」の立場ですが。
大今 はい。だからフシは「いま生きている人とどう向きあっていくか」「どう助けられるか」というところに興味がいく……んじゃないかなぁ、と思います。
キーパーソンは13人! ファン注目の次なる展開とは!?
――気になるのは今後の展開ですが……。
大今 全然、決めてないんですよ。フシに関わる人物は、13人くらいは出したいなぁ、とは思っているんですけどね。
――どうして13人なんですか?
大今 もとの投稿作が『13人の灰剣』というタイトルで、それは13人の灰でできた剣……ってニュアンスでしたから。
――その13人にはオニグマも含まれます?
大今 熊とかはカウントしてないです。一度に複数人を出す可能性もある、とは思いますけどね。
――では今後の物語は、大今先生の状況に応じて紡ぎだされていく……、と。
大今 おお。いいですね、それ。
――見どころとしては?
大今 いやぁ、そのぉ、うーん、読んでくれるだけでうれしいです……。
――いいコメントですね。
大今 あ、モグラとカニは好きなので、よかったらそこに注目してください(笑)。
――今後にも期待してます(笑)。ありがとうございました。
取材・構成:加山竜司
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