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山田参助『あれよ星屑』インタビュー 「突撃一番」でタイムスリップ感覚

2015/07/13


自作した「突撃一番」で戦時中にタイムスリップ!?

山田 閑話休題。

――はい。

山田 昔の人の性意識について、すごく興味がありまして。

――性意識、と言いますと?

山田 自分が知らない時代の人たちの、セックスについて。

――なるほど。

山田 そこでこの……、「突撃一番」が出てくるわけなんですけども。

山田先生お手製の「突撃一番」のレプリカ。ドライ式のコンドームって初めて見ました。

山田先生お手製の「突撃一番」のレプリカ。ドライ式のコンドームって初めて見ました。


――これはコンドームですね?

山田 そうです。陸軍で支給されたコンドームです。

――当時は「サック」と呼ばれていたんでしたっけ?

山田 はい。「衛生サック」ですね。岡本理研が作っていました。

戦中編より、初年兵に衛生サックの使い方を指南する棟方と黒田。慣れないと……なかなか難しいものなのだ……。

戦中編より、初年兵に衛生サックの使い方を指南する棟方と黒田。慣れないと……なかなか難しいものなのだ……。


――今のオカモトですね。

山田 僕、コンドームを集めるのが好きなんですよ。

――集める?

山田 コンドームのパッケージが好きなんです。

――パッケージというと、箱ですか?

山田 外箱と中箱、あとは個別に包装されている袋ですね。三重構造になっているじゃないですか。そこがもう愛おしいんですけど、その……、デザインの地味な、薬局に置いてあるゆえの、ちょっと薬然としたデザインというか……。

――まあ、しおらしい感じですよね。

山田 そう、しおらしいの! あのたたずまいにすごく惹かれるものがあって、ああ、いいデザインだなぁ……、と。

――この「突撃一番」はレプリカですか?

山田 そうです。もともとは古道具屋で「突撃一番」の紙袋を入手して、それを複製しました。そのなかにドライ式のコンドームを入れると、当時のものに近いものができあがります。

――これ原寸ですか?

山田 原寸です。

――へー、こんなに小さな袋だったんですね。

山田 これを掌の上に乗せて弄んだりしていると、やはり軍服を着るのと同じで、タイムスリップする感覚がありますね。

――時代感覚として。

山田 紙袋の感触とか、袋からサックを出すときのニュアンスとか、やっぱり作ってわかることって大きいので。

――当時の性意識って、当事者じゃないとわかりづらいところですね。赤線や青線だって存在していたわけですし。

山田 たとえば、現代の人はAVに影響されたセックスをしてると思うんですよ。

――たしかに。

山田 なので作中でベッドシーンを描くにしても、AVがない時代のセックスに思いをめぐらせるわけです。

――なるほど。ここはうまく描けたなぁ、ってシーンはあります?

山田 うまく描けているかどうかはわかりませんが、小津組のヤクザたちが猥談をするシーンは気に入っています。

今も昔も、男ばかりが集まれば、話題は自然とソッチのほうへ……。

今も昔も、男ばかりが集まれば、話題は自然とソッチのほうへ……。


――1巻の第4話ですね。

山田 現代の性感覚とは違うポイントでエロ話をしている感じ。あそこはセリフを書きながら自分のなかにはないものが外側から降りてくる感じがして気持ちよかったですねぇ……。

――たしかに70年前と現代では、性や結婚に関する意識が違いすぎますね。

山田 がらくた市で見つけたんですが、当時は結婚紹介雑誌なんてのがあったんですよ。「結婚雑誌 希望」っていう雑誌なんですけど。文通欄を見ると「当方○歳、どこどこ住みの男、健康な嫁求む」なんて書いてある。戦争で旦那を亡くした人や、戦地から帰ってきた人が、そういう雑誌を通じてお見合いをしていたんですね。

――その「希望」が主催して、戦後に多摩川で集団お見合い[注10]を実施していたそうです。

山田 へー! 家の存続とか、そういったものから現代はほぼ解放されちゃっていますからね。家を存続しようという考えがあるから、結婚して子どもを作ろうとするわけで。不幸になっても結婚しとけ、みたいな感覚なんですかね。


  • 注10 多摩川で集団お見合い 1947年11月6日に「希望」が主催。20代から50代までの男女合計384人が参加したという。それにちなみ、11月6日は「お見合いの日」とされている。

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