第3巻の発売によせて
――さて、6月25日に単行本第3巻が発売されました。みどころはどこでしょうか?
山田 どこでしょう?
担当 再び戦後編に戻りますよね。
山田 あっ、そうですね(笑)。再び焼け跡でのバディもの、仲よし話が始まります。
――1巻が戦後編、2巻が戦中編でした。1冊単位で区切るように、話数を計算していたんですか?
山田 いやぁ、全然。川島と黒田、2人の関係性のもとが戦中にある、という設定なので、必然的に戦中編を描くことになったんですけど、描きはじめたら止まらなくなっちゃって。
――3巻は、時系列的には1巻の直後になるんですね。
担当 戦中編で彼らがどのように生きてきたのかを見たあとで、再び戦後編に戻ることで、2人の関係性にもまた違った味わいがあるのではないでしょうか?
山田 3巻では、もう少し焼け跡の事情を描き進めています。浮浪児とか、特攻隊の生き残りとか。これまであまり特攻隊に関しては触れずにきて、それこそ『きけ わだつみのこえ』[注13]を読むくらいで、飛行機下手だし、自分で描くことはないだろうなって思っていたんですが、やるんだったらこうしたいな、と思っていた方向ができたのでそこを見てもらえたらと思います。
――ラストまできっちりと構想しているんでしょうか?
山田 どこに決着するのかは、なんとなく思い描いています。こういうことが起こるんだろうな、と。でも、その時がきたら、グイッと変わるんだろうな、とも思っています(笑)
――では最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
山田 こういう時代のことを読んだり描いたりして強く思うのは、「人の心は変わる」ということです。自分だって、10代のころと、40代の現在では、考えていることが違う。その状況によって言うことが変わってくるのは、現代の私たちだけでなく、昔の人も同様だということを、共通認識として持っておいたほうがいいんじゃないでしょうか。兵隊に行ったおじいちゃんたちの話を聞くにしても、戦後70年、その間に否定されたり肯定されたり、そういったことを何度も繰り返してきた肉体と心なんです。彼らの50年代はどうだったのか、60年代はどうだったのか。その時その時で、戦争を振り返ったときの思いが違うという点に、もう少し想像を膨らませたい。日本映画をさかのぼっていくと、その振り返りかたの歴史をひもとくことができます。自分の作品も、その流れに連なればいいなと思っています。とはいえ、あくまでエンターテインメントですから、素直に、楽しんでいただければありがたいですね。
――今後の展開も楽しみにしてます。ありがとうございました!
- 注13 『きけ わだつみのこえ』 太平洋戦争で死亡した学徒兵の遺書を集めた遺稿集。初版は1949年に発行されている。
取材・構成:加山竜司
撮影:辺見真也