作品の透明感を生む薄墨を使った濃淡表現
――絵の雰囲気も、非常に独特だと思います。これはどうやって描いてるんですか?
相澤 これは薄墨で色を着けてます。
――え、これ薄墨なんですか?
相澤 ペン入れをして薄墨で着色するまでは手描きです。そのあとスキャンして、セリフを書いたりフキダシを重ねたりするのはデジタルでやっています。
――薄墨での着色は筆ですか?
相澤 筆です。
――スクリーントーンは使わないんですか?
相澤 使ったこともあるんですけど、完成原稿を見て「色の数が少ないな」と思ったんです。
――色の数ですか。
相澤 もっとハーフトーンがほしかったんですね。それで墨を使い始めました。「アフタヌーン四季賞」[注10]で準入選をいただいた時も、墨でした。でも担当さんからは「次はトーンを使ってくださいね」って言われちゃったんです……。それでスクリーントーンを使って描いてみたんですけど、その作品は賞を取れなかった。だから自分としては、やっぱり墨でいきたいなっていう思いがあるんです。
――墨の濃淡での表現が気に入っている?
相澤 そうです。それからはスクリーントーンを使わずにやってきています。
――もしかしたら印刷コストの問題とかもあるのかもしれませんね。
相澤 それもあるかもしれません。「電脳マヴォ」で描いているぶんには、あそこはWEBで表示するだけなので、まったく気にせずに墨でやってました。今回紙の単行本を出せて、すごくうれしいです。
――相澤先生、ありがとうございました! 単行本は12月10日全国書店にて発売予定です。
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- 注10 「アフタヌーン四季賞」 講談社のマンガ雑誌「アフタヌーン」が1986年の創刊時から主催しているマンガ新人賞。正式名称は「アフタヌーン四季賞」。その名のとおり、春・夏・秋・冬の年4回募集がある。過去受賞者に新井英樹、王欣太、漆原友紀など。審査員特別賞、四季賞、準入選や佳作受賞者を含めると、現在活躍中の漫画家が多数出ており、「マンガ家の登竜門」的な賞として広く知られている。
取材・構成:加山竜司
撮影:辺見真也