史実を調べたうえで自由に想像をふくらませて……説得力のあるファンタジーを目指しています
——少年侍従というものは実在したんですか?
久世 明治時代にはいたらしいんですよ。大正時代になるとなくなるのかな。今は幻の役職です。
——御園家の家族にもそれを感じますが、当時の人って個性的で……身分が高くても品行方正というわけじゃないんですね。
久世 戦前の皇族の資料を読んでいると、昔の人ってけっこうむちゃくちゃだったんだなぁと思います。側室制度が残ってた時代ですから、正室と結婚する前に子どもがいる貴族もいましたし。豪遊しすぎちゃって貧乏になる貴族もいたりして。皇族、貴族の人口が多かったから幅があったともいえるんですが。そこを描くと、当時ならではの魅力、息吹が伝えられるかなと思います。
——とはいえ、『パレス・メイヂ』はあくまでも日本に似た……架空の国が舞台のフィクションなんですよね?
久世 そこは声を大にして言いたいです! 『パレス・メイヂ』は歴史マンガじゃありません(笑)。史実を調べてはいますが、調べたそのものを描くんじゃなくて、それをベースにファンタジーを描いていくという。ちゃんと調べるほど、説得力のある嘘が描けるはずだと思っていますので。
——そうした下地があるから、読む側としては、安心してストーリーにも絵にもうっとり酔えるんですね。
久世 実際はこうだったんだなと思いつつ、好きな部分をすくい上げながら創っていく感じです。それは、ストーリーの題材にしても絵にしても。
——衣装もそうですか?
久世 彰子が着ているのは肋骨服という軍服なんです。肋骨のように飾りひもがついてるタイプ。古いタイプの軍服で……その頃、軍服の改正があってボタン式に変わっていくんです。ボタンだと絵的にはちょっと地味なんですよね。明治天皇と乃木希典は肋骨型が好きだったのか、よく着ていたみたいですが。
——この、ひもが垂れているところ、肩章のひもも華やかですね。
久世 ですよね? ボタンよりひもが垂れてるほうがみなさんも好きでしょ? 華やかさが違いますよね。
——宮中のインテリアなどもいろいろアレンジを?
久世 そうです。たとえば「ここから先は男性は入れない」という杉戸の絵も、資料を参考にしつつ、オリジナルのふすま絵にしています。