最終回のつもりで描いた4話目は、思い入れが強いです
——資料集めはかなりたいへんなのでは?
久世 流通しているものは自分で買いますけど、古すぎて入手できないものは国立国会図書館に通ってデジタル資料を見ています。時間はかかりますが、楽しい仕事ですよ。いろいろ想像力を喚起されますから。
——資料を読むなかで、「こんな場面を描きたい」と思っていることはありますか?
久世 2巻でも、イギリスから王子がやってくる話を描きましたが、戦前は皇族や貴族間の外交が盛んだった時期なので、そういうエピソードはもっと描いてみたいですね。
——次はもっとイケメンの王子が来ちゃったりするのでしょうか!? 皇室らしいといえば……歌会のエピソードも優雅な雰囲気で素敵でした。
久世 これは編集さんに「宮中行事っぽいネタを入れてほしい」とリクエストされて思い浮かんだんです。三島由紀夫に『春の雪』という小説があって……大正時代に、貴族の男の子と女の子が許されぬ恋をするという物語なのですが……これにもよく出てくる宮中行事で。雅な雰囲気がいいなと前から思っていたので。
——作品中に描かれた歌会のルールは現実のものと同じ?
久世 ホントもあるけど、やっぱり嘘もあります。実際は、東辻くらい若い人が講師(歌を最初に朗読する役)を務めることはないですね。
——宮中行事ネタ、もっと描いてほしいです!
久世 やっぱり行事ネタは高まりますよね。あまり神事色が強い行事だと、マンガにするには華やかさに欠けるので、悩みどころです。観桜会、観菊会なんていうのはありますけど、どうでしょうね。今でいう園遊会にあたるんですが。
——いっそ宮中行事を創作しては? たとえば国会はどうですか?
久世 あんまり絵にならなくないですかね? 宮殿の外に出ちゃうので、何か仕掛けを考えないと難しそうですね。
——作中で、久世先生ご自身が気に入っている場面は?
久世 1巻の最後、4話のクライマックスあたりです。当時はこれで最終回のつもりで、この2人を描くことはもうないんだなと思いながら描いていましたし。御園が自分の想いを告白するシーンで、感情がこもりましたね。
——何度読んでもグッと高まる名場面です!
久世 この4話は、マンガ家になって初めてリテイクなし、ネーム一発で何の直しもなく通ったという意味でも思い出深いです。しかも、規定のページ数より多く描いてしまっていたんですよ。本当は45ページのところ53ページも描いていて。大幅な直しが入るだろうと思いつつネームを出したら、編集さんが「おもしろいので、このまま載せられるようになんとかします」と言ってくださって。
——それだけ完成されていたということですね。
久世 どこを削ればいいかわからなかったので、編集さんの意見を仰ごうと思っていたので……本当に信じられなかったというか、うれしかったです!
——1巻で終わらせるつもりでいたのが続きを描くことになり、仕切り直しは難しくなかったですか?
久世 1巻であそこまで描いちゃった以上、2巻は最初から「身分違いの恋愛」をメインにしていくしかないだろうと思いました。
——今後、彰子と御園の関係がどこまで描かれるのか気になります!
久世 やっぱりハッピーエンドにはしたいです。どんな形のハッピーかはわからないですけど……悲しい終わり方にはしたくないです。読者さんも怒っちゃうと思いますから。私もそうされたら怒っちゃうタイプの読者なので(笑)。終わり方は、ゆっくり考えていきます。読んでる人に「ああよかった、おもしろかった」と思ってもらえるようにしたいです。
次回は『パレス・メイヂ』の“セレブ感”の秘密に迫る。さらに、エッセイマンガでも大活躍している久世先生の他作品たちや、デビュー前の暗黒時代(!?)についても直撃!
プレゼントのお知らせ
久世番子先生の直筆サイン入り『パレス・メイヂ』単行本第2巻を3名様にプレゼント!
下記の専用アンケートフォームから必要事項をご記入のうえ、ご応募ください。
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たくさんのご応募、お待ちしております!
プレゼント応募は締め切りました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました!
取材・構成:粟生こずえ
撮影:辺見真也