人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、安藤ゆき先生!
主人公の町田くんは、地味で不器用なメガネ男子。一見すると優等生だけど勉強はイマイチ、運動神経は見た目どおりにパッとしない……。でも、町田くんはみんなからとっても愛されている。その理由は、「人が大好き」な町田くんがみんなのことを愛しているから。
そんな町田くんの目を通して見える世界はこんなにも愛おしい――。
安藤ゆき先生にとって初の長編作品となる『町田くんの世界』は、ゆったりとした独特の空気感と優しい世界観の新感覚少女マンガ。
これまでの少女マンガの理想男子のような完璧イケメンではないけど、優しさレベルMAXの町田くんは、イマドキ女性読者の心を癒しまくり!
『このマンガがすごい!2016』オンナ編第3位にランクイン、最新刊の3巻も発売され、ますます注目度が高まる『町田くんの世界』について、作者の安藤ゆき先生にお話をうかがいました。
出発点は“人たらし”というキーワード
――見た目は地味で、マジメだけど不器用で。すごい取り柄があるわけでもないのに、どんどん好きになってしまう。町田くんはとても新鮮な主人公像だと思います。
安藤 町田くんというキャラクターは、ひとことで言うと“人たらし”なんですよね。
――なるほど。天然な“人たらし”なんですね。人によく思われようとして振る舞うのではなくて、ひたすら正直というか……そんなところがかっこいい!
安藤 私のなかではかっこいい男の子というよりも、“好きになってもらえる人”を描いているという認識でした。なので、かっこいいと思っていただけるならとてもうれしいです!
――ちなみに先生がかっこいいと思うのはどんな人でしょうか。
安藤 まっとうに働いている人はみんなかっこいいです! 自分が社会不適合者なので……(笑)。
――町田くんはいわゆる少女マンガ的な「かっこよさ」とは違う、まさに“まっとうなかっこよさ”を教えてくれるキャラクターだと思います。家族や友人など、町田くんの周囲にいる人たちが影響を受けていく構図も新鮮です。
安藤 町田くん主体ではなく周囲の人たちにスポットを当てていく描きかたは、人たらしという町田くんのキャラクターをしっかり楽しんでもらうために考えた方法です。1話ずつ、ひとりをじっくり“たらして”いくかたちなら描けるかなと思ったので。
――読者もいっしょに“たらされて”いくわけですね。『このマンガがすごい!2016』オンナ編第3位にランクインしたのもその結果だと思います。
安藤 うれしいです! ありがたいです!!
――読者の方からはこの作品にどんな反響が寄せられていますか?
安藤 「空気感が好き」という感想をいただきますが、自分では読みとれないので、どういうものなんだろうというのは気になります。
――個人的には最新3巻の9話で、学校の屋上で町田くんにハトがたくさん寄ってくる場面、そのあとに眼帯を外しメガネをかけて街を見わたすシーンがとてもいいな! と。 たしかに空気感としか言いようがないかもしれませんが、町田くんのまとっているフラットなたたずまいが心地よくて。町田くんのようにあまり表情を変えないキャラクターって、描くのが難しくないですか?
安藤 描く時に意識しているのは町田くんが笑いすぎないように、ということですね。マジメなんですが、ちょっと滑稽に見えてくれればいいなと思います。