このマンガがすごい!WEB

一覧へ戻る

【インタビュー】眉月じゅん『恋は雨上がりのように』 世のおじさんたちをキュンキュンさせる淡い恋物語の原型は『羅生門』!? 幅広い世代に共感を呼ぶ『恋雨』が生まれた秘密に迫る!

2016/10/19


ドラマティックで美しい雨の物語が大好きだった

──本作では、「雨」がとても印象的に使われています。告白の場面もですが、あきらが店長に初めて会った日も雨だったわけで。雨をキーワードにしたのはなぜでしょう。

koiame_c07

眉月 雨が出てくる作品が好きなんです。『恋は雨上がりのように』に雨が多いのも好きだからそうしようと決めていました。直接の関係はないんですけど、『恋は雨上がりのように』の元になった短編『羅生門』でも雨は降っていました。ちなみに、第21話の扉ページは、短編の『羅生門』の扉を再利用しています。

──この……校舎に雨が降ってる絵ですか?

koiame_c08

眉月 そうです。「ちばてつや賞」応募時は、この上のところに『羅生門』というタイトルを入れていて……。

──奇跡の復活ですね!

眉月 ちょうどいいから、あの原稿を使っちゃおうと4年ほど前の原稿を引っぱり出してきて。こうしてついに日の目を見て、供養された気分ですね(笑)。でも、『羅生門』以外にも、雨の物語に好きなものが多いんです。ジブリ映画は……ほぼ全部雨降ってますよね。ほかに映画では『花とアリス』[注1]や『Shall weダンス?』[注2]。マンガでは、武内直子さんの『ミス・レイン』[注3]です。これはヒロインが雨女なんですけど、雨の描写がとても美しくて。小学生の頃に読んで感激した作品で、雨のロマンティックなイメージが強くすりこまれたのかもしれません。

──雨以外にもいろんな表情の空、風の描写も多く、大胆に空間を使っていて映画っぽいムードを感じます。

koiame_c09

眉月 映画に出てくるようなシーン作りは意識して描いていますね。空は、あきらの気持ちとリンクしているようなイメージです。この作品で、とにかく天気は大事です。

──映画的といえば、モノローグなし、セリフなしで微妙な変化を読み取らせる演出も多いですね。

koiame_c10
表情の変化のみであきらの心のなかをうまく表現しています。

表情の変化のみであきらの心のなかをうまく表現しています。

眉月 メインの2人が口数が多くないので、そのぶん表情で語らせるよう気をつけてます。

──また、たまにあきらがわかりやすく照れたり慌てたりするのがかわいい。それにしてもあきらの、あのまっすぐな瞳の魅力は強烈です。単行本の表紙にひかれて買った人も多いんじゃないでしょうか。

眉月 この作品を描く前にプチスランプみたいな時期があって……人物の目に気持ちが入らないことがありました。そこで、『恋は雨上がりのように』を立ち上げるに当たって、絵柄も見直そう、マンガを描くことに対して仕切り直そうという気持ちで臨んだんです。編集部の方々から、前の連載の絵はよくない、絵柄を変えたほうがいいといわれていて、自分自身でもそう思ってたんです。

──この作品には合わない、という意味で?

眉月 いえ、合う合わないじゃなくて。前の絵は好き嫌いがかなり分かれる、万人受けしない絵柄だったと思います。正直なところ、自分で自分の絵を愛せなかった。でも、その時はそれしか描けなくて。なので、この連載では、納得いくまで妥協しないで、絶対にかわいいと思える女子高生を描こうと思って取りくみました。

──あきら、目力ありますよね! 一度見たら忘れられない、吸いこまれそうな瞳です。

眉月 つり目の女の子、大好きなんです!

最新単行本6集も絶賛発売中の『恋は雨上がりのように』、あきらや店長への思いや、もととなる作品について、さらにはご自身の胸が熱くなるキーワードまで、本作を深く読み解くためのポイントにせまった今回のインタビュー。

次回は、眉月じゅん先生が影響を受けたマンガ、漫画家になると思いたったきっかけ、意外な漫画家さんのアシスタントをしていたお話、さらに今後描いてみたい作品など、よりパーソナルかつマニアックな部分にせまっています!
そして、気になる今後の展開や結末についても……!? インタビュー第2弾は10月26日(水)公開予定! お見逃しなく!


  • [注1]『花とアリス』 岩井俊二監督の日本映画。親友同士の女の子2人が、記憶喪失になったひとりの青年をめぐって繰り広げる奇妙な三角関係を描いた青春ラブ・コメディ。
  • [注2]『Shall we ダンス?』 周防正行監督の日本映画。社交ダンスをテーマに描いた大ヒットコメディ。
  • [注3]『ミス・レイン』 『美少女戦士セーラームーン』(講談社)シリーズで知られる竹内直子先生の、「なかよし」(講談社)に掲載された読みきり作品。単行本も刊行されており、初期の読み切り4作品が同時収録されている。

取材・構成:粟生こずえ

単行本情報

  • 『恋は雨上がりのように』第6集 Amazonで購入
  • 『恋は雨上がりのように』第1集 Amazonで購入

関連するオススメ記事!

アクセスランキング

3月の「このマンガがすごい!」WEBランキング