日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『恋は雨上がりのように』
『恋は雨上がりのように』第4巻
眉月じゅん 小学館 ¥552+税
(2016年1月12日発売)
バイト先のファミレス店長に恋心を抱く女子高生の物語。
17歳×45歳という年の差設定にして、真っ当すぎる純愛路線が大きな反響を呼び、「このマンガがすごい!2016」ではオトコ編第4位を獲得。今年から掲載紙も「月刊!スピリッツ」から「ビッグコミックスピリッツ」へと移った(隔週連載に)。
「君が俺のなにを知っているの?」
2人きりになったバイト先の控室で、店長から背中越しに思わぬ言葉を投げつけられたあきら。
翌日は店長が風邪で休んだこともあり、もんもんとした気持ちで過ごすことに。結局、いてもたってもいられずに台風襲来のなか、店長の家へ――。
やきもきする展開で第3巻が終わったので、「早く続きを!」と鼻息を荒くして待っていた諸兄も多かったことだろう。
狭いアパートの一室で2人きり。せつない思いをぶつけるあきら。思わず抱きしめてしまう店長……。
健康な男子たるもの、こうなったら歯止めがきかなくなりそうだが、どうにか踏みとどまるあたり、さすがは45歳バツイチだ。
店長は「これは友達としてのハグ!!」と強引な幕引きをはかるが、最愛の人に抱きしめられた17歳女子としては「はぁ、そうですか……」というわけにはいかない。
店長から風邪をうつされ、朦朧とした意識のなか、いろいろな意味で熱に浮かされてしまうのであった。
特筆すべきは、店長にここまでされても、同級生に恋をするのと同じように「友情から始まる恋愛もある」と前を向くこと。
この、あきらのまっすぐさと健気さとまぶしさこそが、読む者の胸をわしづかみにするのだ。
本巻の終盤では、あきらと店長、それぞれの親友とのエピソードが綴られる。
陸上部のはるかとうまく仲なおりできないことに悩むあきらに、人生の先輩である店長が「かけがえのない時間は決して消えてなくならない」ことを伝える。
スーパームーンを見上げながら、年齢や性別や立場を超えて共鳴する2人の姿が美しい。
深い余韻の残るすばらしい最新巻だ。
<文・奈良崎コロスケ>
マンガと映画とギャンブルの3本立てライター。中野ブロードウェイの真横に在住し「まんだらけ」と「明屋書店」と「タコシェ」を書庫がわりにしている。著書に『ミミスマ―隣の会話に耳をすませば』(宝島社)。『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』(2月13日公開)のパンフレットに参加しております。