本誌『このマンガがすごい!2014』にて、『虹の娘』『あれがいいこれがいい』のデビュー2作品が同時ランクインを果たした、いがわうみこ先生。
今回のインタビューでは、そんないがわ先生に、魅力的な台詞の秘密から、あの人気キャラのモデル(?)まで、多彩な話をお聞きしました!
(後編は→コチラ)
「このマンガがすごい!」ランクインは予言していた!?
――以前から「このマンガがすごい!」を読んでくださっていたとうかがいました。ありがとうございます。
いがわ 普通に買って読んでました。「このマンガがすごい!」のフェアをやってる書店さんで、ランクインしてる作品を買ったりとか。
――そんないがわ先生は、2013年1月にデビュー単行本『あれがいいこれがいい』を、続いて同年5月に『虹の娘』を刊行されて……デビュー2作品が同時にランクインするのは、「このマンガがすごい!」史上、初の快挙なんですよ。
いがわ ありがとうございます。それを知ったばかりの時は、なかなか実感がわかなかったのですが……(本誌に掲載されている)アンケート回答の個々のコメントを読んでいるうちに、どんな人がどんな気持ちで票を入れてくださったのかがわかって、じわじわランクインした実感とうれしさがわいてきました。
――単行本が出た時は、「自分の本もランキングに入るかも?」と想像してましたか?
いがわ じつはデビューした当時、その先の5~6年分くらいの目標をノートに書き出したことがあって。まさに、そのひとつに「20××年、『このマンガがすごい!』にランクイン」という目標が……。当時、書きながら「ちょっと無謀かな」って思ってましたけど(笑)。
――しっかり達成してるじゃないですか! その未来予想図には、ほかにどんなことが書いてあったんですか?
いがわ 「FEEL YOUNG」の表紙になるとか……これはまだ実現してないですね。あとは……年収関係ですかね(笑)。
――なかなか現実的ですね(笑)。ランクイン作品の話に戻りますと、連載作品ではなく、短編や連作集で支持を集めるというのも珍しいんですよ。いがわ先生の作品は、どの話の登場人物も、身近にいそうに思えて、でも紋切り型ではないところが魅力に感じます。キャラクターはどのように考えているんですか?
いがわ まずストーリーありきで、キャラはあとから考えることが多いです。ただ、以前は「話が流れればいい」ぐらいに考えていたんですが、最近はマンガってやっぱりキャラが重要だと思うようになって。『あれがいいこれがいい』は連作[注1]なので、最初の2話を描いたあとに「こういうタイプがいるからこういうキャラを作ろう」と、キャラで攻めていく形になりましたね。
キャラクターの会話は「脳みその表面会話」から?
――台詞だけでなく、ちょっとした仕草など……女の子でいえば、オンオフの服装の違いやメイクのビフォーアフターからも、キャラの性格がにじみ出てますよね。各キャラにモデルはいるんですか?
いがわ ズバリこの人、という感じではなく、いろんな人のちょっとした特徴や要素を組み合わせて作ることが多いです。こんなキャラにしようとイメージを固めながら、実在の人の仕草を真似して使うんです。あの人のこういう言いかた、こんな仕草がよかったな、と思い出して。
――わざわざ観察するのではなくて、記憶のなかからひっぱり出す感じ?
いがわ はい。……私、どうでもいいことばっかり覚えてるんです。みんなが覚えてて当然みたいなことを覚えてないのに、くだらないことばっかり覚えてるんですよ、なぜか。
――それが創作に役立ってるわけですね。小さいころからの記憶の蓄積がけっこうあるタイプですか?
いがわ そうなんです。日常会話のなかで、「ふ~ん」と引っかかったこと、ちょっといいなと思ったりするくらいの些細なことが、記憶に刷りこまれてるみたいです。メモもほとんどとらないほうなので。
――いろいろな要素が結晶化して、存在感のあるキャラを作りあげているんですね。いがわ先生の作品は、キャラ同士の雑談を眺めているだけでも充分おもしろいです!
いがわ 私自身、友だちとしゃべるのが一番の楽しみと言ってもいいくらい好きだから……かもしれませんね。
――学生時代からですか?
いがわ 学生時代からもそうですし、今現在もですね。くだらないことを延々しゃべるのが大好きなんですよ。悩みとか真剣な話じゃなくて……きのう、部屋にゴキブリが出たので、どうやって殺したとか(笑)。最近これを「脳みその表面会話」っていってるんですけど。
――脳みその表面会話! いい言葉ですねぇ。もしかして、学生時代はずーっと放課後、学校に残ってしゃべりまくってたタイプでしたか?
いがわ そうです。高校くらいになると(場所が)ファストフード店になって、今はファミレスですね。近所にいいファミレスがないので、わざわざタクシーを使って遠くのファミレスまで行って、あいかわらず友だちと長時間くだらない話をしています(笑)。
――まるで『THE 3名様』[注2]のような(笑)。そのなかで作品のネタが見つかることもあるんですか?
いがわ いえ、そこはキャラ作りと同じで、やっぱりズバリ直結することはないです。その場の雰囲気が参考になることはありますけど。
- [注1]『あれがいいこれがいい』は連作 前後編の構成となっている2篇の短編「あれがいい」と「これがいい」を中心に、グランドホテル方式で各登場人物の心情が描かれている。
- [注2]『THE 3名様』 石原まこちんのギャグマンガ作品。3人の常連客が深夜のファミレスを舞台に、山なし谷なしオチなしのユルい会話を繰り広げる。