お気に入りキャラのキーワードは「小者」?
――『はたらく細胞』って、背景めちゃくちゃ描きこまれているじゃないですか。当たり前のこと聞くようですけど、やっぱり描くのがお好き?
清水 ええ、はい(笑)。
――でも、体のなかって空想の世界じゃないですか。それでもすごく細かく描きこまれてらっしゃる。どういったところから着想を得たのでしょうか?
清水 たとえば肺は空気が行き来しているから、風がたくさん吹いているところ、というイメージで描いてます。
――体の機能からヒントを得ているということですか?
清水 わりとそうですね。運河の上に橋があるところなんかは、自分の想像で「こういうところがあったらいいなぁ」と、空想の世界です。
――モデルにするものはあるんですか?
清水 肺のところは空港をモデルにしてます。とにかく大きい建物に、大きい通路。
――一番描いていて楽しいのは、どういったところですか?
清水 キャラクターの動きが、すごい楽しいです。
――それは、アクション的な意味で?
清水 それもあるんですけど、白血球が他人とちょっと違うことをしていて、それを絵にするのが楽しいです。4巻で白血球が曲がり角からひょいと出てきて、遠くに赤血球がいることに気づくシーンがあるんですが、普通に出てきたんじゃおもしろくないので、壁にある四角い穴から前転でくるっと回転しながら出てくるようにしたんですけど、そういうのを考えるのがすごい楽しいです。
――巻を追うごとに、だんだん白血球の動きが活発になっていく印書があります。最初は、うまく動いてくれなかった?
清水 いえ、動きはしてくれたんですけど、この人(白血球)の倫理観とか道徳みたいなものが、私のほうで全然理解できてなくて。みんなのためにがんばるとか、美学みたいなものですね。だから最初の頃は、白血球をクライマックスで活躍させてあげられなかったんです。だから、3巻の表紙みたいな表情とかもそうなんですけど、1コマ1コマではすごく活き活きと動いてくれるんですが、長いお話のなかではちょっと……という感じでした。
――キャラをかっこよく描こう、と工夫していることは?
清水 この細胞をかっこよくしようとかは、とくに考えていなかったんですが、キャラが性格づけされた時に、たとえばNK細胞はこういう性格になったとか、マクロファージはこういう性格になったという時に、できるならかっこよくしてやろう、と。
モブの細胞君とかはあんまりそういう機会はないんですけど、小市民なりに楽しくやっているという方向で強化できるので、家の間取りとかも考えて、生活感を出せる方向性に強化してがんばって描いてます。
――お気に入りのシーンはどこですか?
清水 2巻の第6話で、セレウス菌が「涼しいところで衣服をゆるめて安静にしてな!」っていうところです。
――それはなぜ?
清水 「こいつ、いいやつだな」って。あと、その直後の、白血球が崖から落ちていったか確認するところも好きです。
――へぇー……、いや、すいません「なんでここ?」って思っちゃったんですけど、どうしてでしょう?
清水 そうですよね(笑)。なんか小者感が出ているので好きなんです。正義の味方はちゃんとかっこよくしないといけないし、勝たなきゃいけないとか、義務がたくさんあるんですけど、こういう小者の悪役は何やってもいい、みたいなところがありますからね。
――性格的にご自分に似ているキャラというのはいます?
清水 えっと、兄妹に対してはNK細胞が一番似てる、かな……。
――けっこう強く当たるんですね(笑)。
清水 からかって意地悪したりします(笑)。
――お気に入りのキャラはいますか?
清水 敵役になっちゃうんですけど、セレウス菌とウイルス感染細胞。あとウイルス感染細胞といっしょになっていたずらしていた細胞君です。行動原理が「怒られたくない」みたいなところがすごい好きです。
――先生、小者好きですね?
清水 そうですね、人間っぽいので(笑)。
次回は、最新4巻の見どころと、まさかの『ドカベン』不知火と本作の深い関係(!)について、うかがいます。12月更新予定なのでお楽しみに!
取材・構成:加山竜司