原稿はフルアナログ!
――漫画家になろうと思ったきっかけは?
清水 幼稚園の時に、先生に「絵が上手だね」っていってもらったからだと思います。たぶん小学館から出ていた『まんが家になろう!』という本があって、それを読んで「つけペンというのがあるんだな」と知ったりしました。それでつけペンを買ってみて、マンガを描いて、おもしろいなぁ、と。
――ああいうのを読まないと、つけペンとかGペンの存在は知らないですよね。でもそこで「買おう」とは、なかなかならないですよ。
清水 なんか大人のマネをしているみたいで、それが楽しかったんですね。
――それでペンを買って、それで……『ドカベン』を描いた?
清水 いや、『ドカベン』は描きませんでした(笑)。『ドカベン』は帽子の形が難しくて描かなかったんです。『あさりちゃん』は描きましたよ。あと『ポケモン』も。
――今はアナログですか?
清水 全部アナログで描いてます。デジタルはやってないです。
――アシスタントさんも?
清水 そうです。来ていただいて、仕上げをアナログで手伝ってもらっています。
――今、フルでアナログなのは珍しいですよね?
清水 うちの連載だと清水さんだけ、かもしれないです。
――デジタルへの移行は考えていない?
清水 今のところは考えてないです。データが消えちゃうのがすごい怖いので。一時期デジタルに憧れて、中古のノートパソコンを買って、簡単なお絵かきソフトみたいなのを使ったこともあるんですけど、やっぱりすごい古いパソコンだったので勝手にデータが消えたりとか何度もあって、もうこれはいいや、と。
――絵に対して強いこだわりがある方ですよね?
清水 わりとあります。キャラクターの目、とかですね。
――ぜひ、もう少し具体的にお聞かせください!
清水 白血球にかぎらず全員そうなんですけど、実際の人間と同じように、瞳孔とか光彩とかちゃんとあるよ、というふうにはしていて、パッと見たときに「これは人間の目だな」と認識できるように描いてます。目の部分は個人的なこだわりで、キャラクターの目力はやっぱりあるほうがいいなぁ、と思っています。
――目のハッキリしたマンガは読みやすいですよね。
清水 そうですね。読んでいてキャラクターと目があうと、キャラクターを認識するきっかけになるんじゃないかな、と思っています。
――これからまたキャラが増えてくると思いますが?
清水 今、全然ネタのストックがないですね(笑)。これからどういうキャラを出すとか、そういうのは全然ないです。
――マンガ以外に好きなものは?
清水 映画は名作といわれているものを、勉強のために見ています。最近は4巻で雪が降るシーンがあるので、『八甲田山』[注1]を観ました。高倉健さんがかっこいい。神田大尉(北大路欣也)がんばれ、って見てました。
――今やっている流行のものというよりは……。
清水 そっちのほうには全然いけなくて、時代に逆行して昔のものを見ている感じです。昔のものなのに、今も評価されているのって、いい映画なんだな、と。
――好きな映画は?
清水 いろいろあるんですけど、『大脱走』[注2]とか『天使にラブ・ソングを…』[注3]とか『ローマの休日』[注4]です。キャラクターが立っていて、たくさん出てくる作品が好きです。……まあ、『ローマの休日』は人数は出てこないですけど、王女がかわいい。
――たしかにオードリー・ヘプバーン、かわいい。
清水 キャラクターを前面に押し出してくれる映画は好きです。
――ストーリーよりも、キャラクターが魅力的なほうが好き?
清水 はい。
――作中に細胞に関する説明文が入るんですけど、それを読まなくても物語は読み進められるんですよね。「細胞の擬人化」と聞くと、ずいぶんトリッキーなマンガと思われるかもしれないけど、マンガ自体はすごくオーソドックスで読みやすい。だから余計にいままでどんなものを読んできたのか、気になったんですよね。
清水 ああ、なるほど。オーソドックスなキャラものが好きですねぇ。
――ヒーローものがお気に入り?
清水 とくに自分から好んで見たというわけではないんですけど、2つ上の兄がいるので、いっしょになって『ウルトラマン』とか『仮面ライダー』とか『アンパンマン』は見てました。あと『ゴジラ』とか『モスラ』も子どもの時に何度も見てたので、それの影響もあるかもしれません。
- [注1]1977年に、黒澤明の愛弟子・森谷司郎が監督を務めた映画。原作は、新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』。日露戦争前夜、八甲田山を雪中行軍する、徳島大尉(高倉健)率いる弘前第三十一連隊と、神田大尉(北大路欣也)率いる青森第五連隊は、遭難してしまい……。
- [注2]舞台は第二次世界大戦下のドイツ。『荒野の七人』『老人と海』などで知られる映画監督、ジョン・スタージェスが、スティーヴ・マックィーンをはじめとする5大俳優の夢の競演で、前代未聞の集団脱走を映画化。
- [注3]1992年にアメリカで大ヒットを記録したコメディ映画。殺人現場を目撃してしまったため、ギャングに命を狙われるクラブ歌手・デロリスは、修道院に逃げこむが……。本作でゴスペルに魅了されたファンも多い。
- [注4]オードリー・ヘプバーン主演の、いわずとしれたアメリカの名作映画。ローマを訪問した王女が、市内で出会った新聞記者と恋に落ちる、切ないラブストーリー。