読者が見たことのないものを見せる……その努力を続けること
――しかし、ここまでヒット作を描かれているというのに、そのフレッシュな姿勢に心打たれますよ。マンガ家として、大きな目標はありますか?
岩本 息の長い作家になること。とりあえずあと20年、30年描き続けることです。あとやっぱり、「前のほうがおもしろかったよね」と言われたくないというのがあって。最新作が常に一番おもしろいと言われるようでありたいです。
――そのために必要なのは?
岩本 自分のマンガに客観的になれるか、でしょうか。感覚的に古くならないこと、古くなっている場合に自分で気づけること。たとえば今、高校生を描けるかというと自分は厳しいかなと思うし。そういう問題点もどんどん出てくるんじゃないかな、と思います。
――一方、経験値という強みはありますよね。
岩本 資料の集め方とか検索能力は上がっていると思います。ポイントは新しいものを見つける努力と、ネームを描く力が今より衰えないこと。
――ネームを描く力ってなんでしょうね。プロットをつくるとかネタを思いつくこととはまた違うわけで。
岩本 幸いネームを描くのは好きで、いちばん楽しいです。
――プロットは文字にして書きますか?
岩本 書かないです。頭のなかにはあって、いきなりネームにします。
担当 岩本先生は、ネームをかなり描きこむほうですね。表情や、小物も。頭のなかでビジュアルがばっちり浮かんでいるんだろうなと思って見ています。
――今、注目しているマンガはありますか?
岩本 『ちはやふる』や『進撃の巨人』はいつ読んでもおもしろいなと。長く続いてもパワーがまったく衰えないからすごいと思っています。それから、pixivで見てすごいと思ったのが、おげれつたなかさんの『ヤリチン☆ビッチ部』[注4]。言葉の感覚がまったく違って衝撃的でした。年齢を聞いたら若い方で……斬新な感覚を持っていて技術的にもうまい子はいっぱい出てくるわけで。そういうところでやっていくには、自分もどんどん新しいものを見つけてやっていかなきゃいけない。まだ見たことないものを見せる努力をすごくしなくちゃいけないなと。長く一線で活躍している先輩はそうだなと思います。
――うっ、岩本先生って作品のイメージではもっと淡々としている方かと想像していたんですが……めちゃくちゃアツいですね!
岩本 描きたいものはいっぱいあります。描くとなったら苦労しそうですが、気楽に言うならホラーもエロマンガも描いてみたいし。とにかく漫画家であるかぎりは、挑戦し続けたいです。
――ありがとうございました。
取材・構成:粟生こずえ
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- 注4 おげれつたなかさんの『ヤリチン☆ビッチ部』 著者・おげれつたなかが手がけたBLマンガ。男子校に転校してきた主人公・遠野は、ひょんなことから「写真部」に入部することに。さっそく挨拶に部屋へ向かうと、扉の向こうでオトコの喘ぎ声が!? 山奥の全寮制男子校で繰り広げられるフリーダムな恋と“性”春が描かれるラブコメディ。