そんなコミック版は、先述のとおり『このマンガがすごい!comics 珈琲店タレーランの事件簿』『このマンガがすごい!comics 珈琲店タレーランの事件簿 彼女はカフェオレの夢を見る』に続き、現在は『珈琲店タレーランの事件簿 心を乱すブレンドは』が「このマンガがすごい!WEB」で連載中だ。
この『心を乱すブレンド』は小説では第3巻にあたり、実力派バリスタが集う第5回関西バリスタコンペティション(KBC)に美星も出場するという、シリーズ初の長編となっている。異物混入事件に始まり、第2、第3の事件が発生。いったいだれが、何のために? この謎に美星とアオヤマが挑むという基本構図は変わらないが、第1シリーズ、第2シリーズを受けて随所がバージョンアップ。
その最たるものは作画で、かわいらしさはそのままに凜とした雰囲気もまとうようになった美星の活躍が堪能できる。くせ者ぞろいの参加メンバーたちに、一歩も引けを取らない彼女の姿はじつに頼もしい。現時点の展開では数々の謎が「たいへんよく挽け」るところまでには至らないが、すでに小説を読んだファンは、このあとの鮮やかな謎解きを心待ちにしているだろう。美星らバリスタが臨むエスプレッソ部門やラテアート部門など華やかな競技シーンも、タレーランとその近辺での事件に慣れた目には非常に新鮮だ。
アオヤマもオトコマエ度がアップしながら、依然として美星との距離が縮まらない。その反面、2人の絆が強固になったと思わせる点がいくつもあり、本作は第1シリーズ、第2シリーズを経た現時点での最新作にして、集大成であることも実感できる。解決編はもちろんだが、これまでのゲストキャラにスポットをあてた原作小説第4巻のコミック化も今から楽しみである。
最後に、いちファンとして個人的なことを。初期に美星が口にしていたダジャレ、復活しないものだろうか。だって、「ウキウキしますね…猿だけに」ですよ。脱力しつつも激しく萌えませんか?
<文・松田孝宏>
フリー編集者兼ライター。最近は『特撮の匠 昭和特撮の創造者たち』(宝島社)、『湊かなえ読本』(洋泉社)、『文豪ストレイドッグス 公式ガイドブック 深化録』(KADOKAWA)などに参加。本エピソードのごひいきは山村あすか(の、どちらかというと少女時代)。
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