話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『幻想ギネコクラシー』
『幻想ギネコグラシー』著者の沙村広明先生から、コメントをいただきました!
『幻想ギネコクラシー』 第2巻
沙村広明 白泉社 ¥600+税
(2017年4月28日発売)
『無限の住人』の実写映画化で注目を集める、沙村広明による『幻想ギネコクラシー』の第2巻。よくある「異色ショート集」と思って読んだら、度肝を抜かれること必至!
第1巻では、中国の都市伝説「桃娘」をモチーフに、とある大企業の邸宅の巨大水槽で隔離して育てられた美少女の秘密を描いた「鳳梨娘(フォーリーニャン)」、ある貴族の館で蒐集されていた悪魔的絵画をめぐる物語「イヴァン・ゴーリエ」など、猟奇ホラーな設定の作品が印象的だったが、第2巻ではさらにカオティックな沙村ワールドが繰り広げられている。
たとえば、第1話目の「軍傳(いくさつたえ)」は、29戦無敗の伝説の剣士・石川軍東斉(いしかわ・ぐんとうさい)の偉大なる軍伝を、その家臣が回想するスタイルを取っており、なるほど『無限の住人』系譜のハードボイルド時代劇か−−と思いきや、なんと未来人の女が登場。まさかの舐尿プレイのあと、近未来SFのクリシェ「このままでは数日後に死ぬ」&「未来の遺伝子」問題が勃発。
冒頭で描かれた「伝説の闘い」のセコすぎる種明かしで読者を心底脱力させつつ、最終的には剣に命を捧げた「男のなかの男の話」にアクロバティックに着地してみせる。
わずか20数ページで、時代劇、近未来SF、エロ、ナンセンスギャグ、ハードボイルド……といった多ベクトルの表現を超縦横無尽に展開しながら、ひとりの男の生涯を壮大かつドラマチックに描き切る。
その前人未踏のセンスは、マジで未来人が操作しているのでは……と勘ぐりたくなるほど!?