多岐にわたる雑学・博学やオマージュとともに、著者自身の趣味嗜好が散りばめられた、シュールで幻想的な世界観と奇想天外なストーリーテリングは、マンガというよりは、むしろ谷崎潤一郎や江戸川乱歩などの幻想文学にも通じる、フェティッシュな悦楽に満ち満ちているが、そんな耽美な高みから自らを貶めるように、随所で身も蓋もないギャグ&下ネタを挿入してくる、恐怖劇場アンバランスなバランス感覚もたまりません。
そのほかにも、雄が雌より極端に小さく、出逢うと合体して融合してしまうというアンコウの不思議な生態をモチーフに、人間とコロポックル(ファンタジーでおなじみのアイヌ民話の小人)のトンデモ進化論を展開、『ポーの一族』ばりのアンコウ人間サーガを目指した『ホモ・ロフィエス』。
天然のクズヒモ男とツンデレ女が妊婦体験ジャケットを着て旅に出る「ぷれぐな・ぷれぐな」(タイトルは妊活サプリ「プレグナ」から!?)など、なんじゃそりゃ!?と首をひねらずにいられない、空前絶後の全11話がずらり。
ちなみに「ギネコクラシー」とは「女性上位・女性政権」のことで、2冊を通じて高飛車キャラのセクシーな美女が多数登場するのもポイント。
『波よ聞いてくれ』の残念破天荒美人DJ・ミナレさんにヤラれた輩は、ぜひ!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
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