第4位(80ポイント)
『天に向かってつば九郎』 まがりひろあき(画) 東京ヤクルトスワローズ(作・監)
『天に向かってつば九郎』
まがりひろあき(画)東京ヤクルトスワローズ(作・監) 講談社
ヤクルト・スワローズの球団マスコットとして、大いに活躍するつば九郎。
そんな彼がついにマンガ化! つば九郎といえば愛らしい外見とは裏腹に、手持ちのフリップにとんでもないことを書いて、ときに爆笑、ときにドン引きとフリーダムな芸風でおなじみだがマンガになってもその方針は変わらない。
昼間っからビールに焼き鳥を満喫し、試合中にタブレットで競馬中継を見たり、さらには拾った財布をネコババしようとしたりと毎話2ページ、3ページの短いなかで狼藉のオンパレード。
これが公式の原作・監修で行われているのだから恐ろしい。ときどき思い出したかというのにヤクルト製品の宣伝をするのも笑える。また、巻末にはつば九郎本人(?)からのメッセージも載っているが、いきなり印税の話を持ちだすあたり、本家も十二分にフリーダム。
オススメボイス!
■野球ファンならだれでも知ってる、ヤクルトスワローズのマスコット「つば九郎」がマンガになりました。このつば九郎、カワイイ見た目とは裏腹に球史に残る腹黒マスコットでツバメなのについたあだ名が「畜生ペンギン」! さてこのマンガ、そんなテレビでおなじみのつば九郎の悪行三昧ぶりが存分に楽しめる内容となっております。このマンガ、すばらしいところはつば九郎の絵が実物そっくりというところ。普通こういったマンガってデフォルメするんですが、つば九郎のきぐるみっぽいイメージをよく再現していて、いいんじゃないかと(ゴロー/AV男優)
■つば九郎がマンガになった!! 腹黒いところがたまりません(笑)!!(宮脇書店本店/コミック担当)
■東京ヤクルトスワローズのマスコット「つば九郎」を主人公とした公式認定コミック。鳥キャラなのに酒のツマミに焼き鳥をばくばく食らうわ、自球団の試合中に選手の応援ほっぽりだして競馬に夢中になるわ、この単行本の印税に欲をかくわと傍若無人のやりたい放題。しいてならべるなら、『あいまいみー』『ポプテピピック』に匹敵する“畜生ギャグ”の台頭であります(宮本直毅/ライター)
第5位(76ポイント)
『すこしふしぎな小松さん』 大井昌和
『すこしふしぎな小松さん』
大井昌和 白泉社
SF小説好きの女子高生、小松さん。ある日彼女は、クラスのイケメン男子・宮内くんから話しかけられたことをきっかけに、彼をめくるめくSF小説の世界へ案内していくことに。「初めてSFを読む人へのおすすめは?」「古本屋でSFを探すコツは?」「SF研究会ってどういうところ?」といった具合に、SF小説に関する話題が盛りだくさんなビブリオコメディだ。
SFファンはたいへん共感できること請け合いで、SFを知らない人も「私なんか全然SF詳しくないですから!」と言いながら熱い解説を繰り広げる小松さんと、それをニコニコしながら聞いてあげる宮内くんのやりとりを見ればほっこりできるはず。
しかし、『今日の早川さん』といい、『バーナード嬢曰く。』の神林さんといい、なぜSFファンは微妙にこう、面倒くさい感じになってしまうのか……。
オススメボイス!
■僕は「エロマンガ研究家」とか名乗っていますが、SF研究会出身のSFっ子の僕にとって、これほどSFファンの気持ちを代弁してくれる(しかもかわいい娘で)マンガが今まであっただろうか? 本作は絶対的な推しです。なぜなら、僕自身も作中に出ているからです!(稀見理都/エロマンガ研究家)
■自分の好きなジャンルへのコンプレックスをふりまく小松さんがほほえましくてなごむ。あるあるネタを丁寧に描きつつ到達する最終話の感動に衝撃。単巻で終わるのはもったいない! 最終話以降の小松さんを熱望です(杉山陽一/COMIC ZIN 秋葉原店 コミックバイヤー)
■SFが好きな人って(僕もですけど)、なんでみんな「自分なんてまだまだ……」っていうんでしょうね(僕もですけどー!)。 単巻なのが非常に悔やまれる。続編希望! ケン・リュウとかピーター・トライアスとかもいじってほしい!(竹村真志/三省堂書店 神保町本店・コミック担当)
■SF小説を乱読しながらも「私なんて全然SFくわしくないですから」と卑下する女子高生・小松さんが主人公の読書エッセイ的なマンガ。古書店に「SFマガジン」のそろいが出品された、という場面での「世界からSF仲間がひとり消えたということ」というセリフは至言といえよう(残念ながら、ヒロインの小松さんのものではないのだが)。それにしても「SF=すこしふしぎ」という言葉の使い方も本当に定着してきましたね(廣澤吉泰/ミステリコミック研究家)
■「自分なんて全然SFくわしくないですから」と否定から入ってしまう(大部分の)SFファンには楽しく読める青春物語。SFファンあるあるだけでなく、軽妙な読書案内にもなっているので、ちょっとSFに興味ある層にも楽しめるつくりなのもいいですね(山本浩平/まんだらけうめだ店コミックスタッフ)
第6位(74ポイント)
『シュトヘル』 伊藤悠
『シュトヘル』
伊藤悠 小学館
舞台となるのは13世紀初頭、大ハンの侵攻によって周辺国が滅ぼされつつある東アジア。
大ハンの血を引きながら一族に逆らい西夏の文字を守ろうとした少年・ユルールとモンゴル軍から恐れられた女戦士・シュトヘル(悪霊)の旅を描く歴史ロマンが完結を迎えた。
これまで魅力的なキャラクターが次々に登場しては激しく戦い死んでいった本作品。
多くの登場人物が過去に囚われ、それぞれ復讐の炎を燃やすなかで、ただひとり、未来を見据え「なぜ文字を守らなくてはいけないのか?」という問いに向かい続けたユルール。その彼が、シュトヘルと別れモンゴル軍に降った後にたどり着いた、長い旅の結末をぜひ目撃してほしい。
オススメボイス!
■文字と国をめぐる物語が完結しました。感無量です(アキミ/「ボーイズラブを読む!」管理人)
■ついに完結。人類が生み出した文字、それにこめられた想いが、時空を超えて人と人を結びつけた(卯月鮎/書評家・ゲームコラムニスト)
■『シュトヘル』は、骨太な「文字」をめぐる人間ドラマを、よくぞ最後まで放り出さずに描ききったという感じ。力作。おすすめ(境真良/国際大学GLOCOM客員研究員・経済産業省国際戦略情報分析官(情報産業))
■多くの人の生を背負った文字の物語、完結。形を変え、読み方を変え、時にはとぎれたりするが、また違った解釈であらわれ、つむがれる。過去から未来へと連綿と続いていく文字の文化、そのただなかに自分がいるんだと感じさせる物語だった。生は短く、記憶は薄れ消えていく。しかし記した文字はそれよりもずっと長く残るのだ(マキタマキナ/(成年)漫画愛好家)