統合失調症、パーソナリティ障害、覚せい剤中毒、うつ病など、病棟にやってくる人たちの症状は様々らしい。とはいえ、タイトルに「観察日記」とあるよう、「こんな人がいて、こんな出来事があって、こんな会話をして」というところが、このマンガのメイン。
医師や看護師ではなく、著者の目から見る「精神病棟の日常」が描かれるため、症例を学ぶようなマンガにはなっていない。あくまで、「目の前で起こったことを伝える」という視点がぶれないので、読む者は、身がまえず、ページをめくることができるのだ。
入院にも、強制的に入院させられる「措置入院」、自分の意思で入院する「任意入院」などがあって、患者さんに自傷他害の恐れがある時は、鍵付きの「保護室」へ、落ちつくと「一般病棟」に移る、など。1話8ページほどで、読みやすいのに、「へえー」っと、驚いたりおもしろがったりしているうちに、じつは意外と知識がついていることに驚く。もちろんそれだけ、今まで精神病棟のなかを知らなかった、ということなのだろうけれど……。
驚いたり、恐れたり、同情したり、そういった感情を大げさに描いたりせず、病棟内で起こった出来事を積み重ねる。「ゆるふわ」と「観察」に徹する描き方のおかげで、感動とは無縁というか。無理やり「よい話」に回収されない、安心感がある。
また、フラットに、「いろんな人がいる」という描き方のおかげで、どこにでも日常があるし、だれもが自分と地続きだと感じられる。
知らないものには恐怖心を抱いたり、自分とは違うと考えてしまいがちだけれど、こうやって気軽に少しでも知ってゆくうちに、精神科への抵抗感が和らいだり、精神疾患への勝手な思いこみが、薄れてくるような気も……。
興味本位でおもしろく読ませてくれて、でもじつはそれだけじゃ終わらせないような、不思議な力のあるマンガだと思う。
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<文・かとうちあき>
人生をより低迷させる旅コミ誌『野宿野郎』の編集長(仮)。野宿が好きです。だらだらしながらマンガを読むのも好きです。