複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。
今回は、「イエティの正体、判明」について。
『衝撃ミステリーファイル1 UMA未確認生物大図鑑』
未確認生物ミステリー研究会 西東社 ¥930+税
(2014年11月21日発売)
キミはイエティを知っているかッ!?
ヒマラヤとチベットの高山地帯に住むという、伝説の雪男であるッ!
もともと現地民のあいだではその存在が伝えられていたが、19世紀にイギリスの軍人が足跡を発見したことにより、世界的に広く知られるようになったUMA(未確認動物)だ。
長年にわたって目撃情報があいつぎ“物証”(歯、毛、排泄物など)も確認されていたが、今日まで生きた姿で捕獲された例はひとつとしてない。
そしてこのほど行われたDNA分析により、イエティの“物証”の持ち主は、この地域に生息するヒグマとクロクマ(ツキノワグマ)であるとの結果が発表されたのだ。
ショック!
イエティの正体はクマだったッ!!
科学分析を信用しないわけにはいかない。
だが、ここにひとつの疑問がある。
そもそもエビデンスが間違っていたら?
分析に用いられた“物証”が、もともとイエティのものではなかった公算は高い。
慎み深く猜疑心の強い世界中のUMAたちは、いまも人間の目を逃れ、この広い世界のどこかで息を潜めているのかもしれないッ!!
そうだ! イエティの存在だって、完全に否定されたわけではないのだッ!!
といったわけで今回は、イエティが出てくるマンガを大特集する。
『少年アシベ』 第8巻
森下裕美 双葉社 ¥550+税
(2017年3月28日発売)
国民的な人気のイエティマンガといえば、もちろん『少年アシベ』である。
本作は「ヤングジャンプ」(集英社)にて連載された4コマのギャグマンガだ。
小学生の主人公・アシベは、偶然に道端でゴマフアザラシ(ゴマちゃん)の赤ちゃんを拾う。そしてアシベはゴマちゃんを飼うことになる。
ゴマちゃんのキュートさと、森下裕美による独特でシュールなギャグがウケてアニメ化もされた。
物語冒頭、アシベ一家は父ちゃんの不始末によって引っ越しをすることになり、アシベは転校を余儀なくされる。アシベと仲よしだったスガオは悲嘆に暮れ、しかもスガオ一家は父の転勤によりネパールに転居することに。ひとりぼっちで悲しむスガオの前に現れたのが、山から下りてきたイエティであった。イエティはスガオのことを気に入り、スガオの家に住みついてしまう。
なお、現在「月刊アクション」(双葉社)では続編となる『青少年アシベ』(原作・構成:森下裕美、作画:笑平)が連載されている。本作では高校生になったアシベたちが描かれる。2018年1月号ではアシベたちがネパールに行くことになるので、イエティの登場にも期待がかかる!
『エリア51』 第3巻
久正人 新潮社 ¥552+税
(2012年4月9日発売)
前述のとおり、イエティはヒマラヤ山脈に生息するとされるUMAだ。
ヒマラヤ山脈はインドやネパールにまたがっており、言い伝えではヒンドゥー教の神とも関わりがあるらしい。
そんな関係性がフィードバックされているのが『エリア51』である。
本作はアメリカの架空の51番目の州「エリア51」を舞台としたハードボイルドアクション。このエリア51はモンスターや神、UMAなど世界中の異形が集められた「無人地帯(ノーマンズランド)」だ。主人公のマッコイ(真鯉徳子)はエリア51に暮らす数少ない人間で、探偵業を営んでいる。
第9話「YOU JUST LOOKED LIKE IT.」(3巻収録)ではキシローの過去が語られるのだが、回想シーン中にインド神話における商売の神・ガネーシャが登場。ガネーシャは、エリア51の湖にバハムートを囲って産卵させ、養殖した卵を「バハ・キャビア」として売りだしていたのだ。そんなガネーシャのボディーガード役として登場するのが、イエティのククリである。
作者の久正人は『ジャバウォッキー』や『ノブナガン』でも見せたように、白と黒のコントラストを基調とした独特な画風の作家だ。ハイセンスなハードボイルドタッチで描かれたイエティに注目したい。
なお、現在はアメリカのドラマ『アメリカン・ゴッズ』や『ロア ~奇妙な伝説~』のように、神話や伝承上の人物や生物を題材とする作品が増えてきている。本作『エリア51』は2017年に完結したばかり(最終15巻は2017年9月刊)。世界的なトレンドを先取りした『エリア51』で、イエティの姿を目撃しておきたい。
『ロッカメルト』 第1巻
藤間麗 小学館 ¥429+税
(2014年1月24日発売)
イエティは雪男の一種だが、雪男の伝承は世界中に数多い。
カナダとアメリカを縦断するロッキー山脈に生息するというビッグフット、全身を体毛に覆われているという広島のヒバゴンもその類型に含まれる。
そう、雪男作品は、日本が舞台になることもあるのだッ!
そして小学館「Cheese!」で連載されていた『ロッカメルト』は、女子高生が雪男と恋愛をするラブコメディなのであるッ!
主人公の土屋一夏の家に、あるとき氷山凍冴と雪也の兄弟が居候することになる。凍冴と雪也は「雪女の息子」……すなわち雪男なのだッッ!!
……雪男というよりは、「オスの雪女」というべきかもしれないが、まあ、ともかく作中では「雪男」とされている。
2人のイケメン雪男と同居することになった主人公はどうなるのか? そして彼女は、凍冴と雪也のどちらを選ぶのか!?
まさに「娘さんよく聞けよ、雪男にゃ惚れるなよ」状態であるッ!!!!
全マスコミが大注目!!
各界のマンガ好きが選んだ本音ランキング……かどうかはさておき、いかがだっただろうか「このイエティマンガがすごい! 2018」。まさに「今、読みたいBEST3」だったはずだ。
あ、「このマンガがすごい! 2018」が今年も発売されたそうなので、そちらもあわせてどうぞ。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama