日夜、注目のマンガを紹介する「このマンガがすごい!WEB」。そんななかで、いつものレビューと違う特別なレビューが……!!!?
ということで、読者の皆さんから大変な注目を集めている連載企画、中島かずきの「このマンガもすごい!」!
脚本家・小説家・漫画原作者として知られる、あの中島かずきさんによる、「このマンガがすごい!WEB」だからこそ可能な、マンガコラム企画の連載!
中島かずきさんといえば、劇団☆新感線の座付き作家としての活動を筆頭に、アニメ『天元突破グレンラガン』『キルラキル』のシリーズ構成や、TVシリーズ『仮面ライダーフォーゼ』のメイン脚本など、マルチな活躍を続ける当代随一のクリエイター! 本WEBサイトの読者の皆さんも、くり返し観た中島さんの作品は多いのでは!?
そんな中島さんが注目する、新旧マンガ作品について、アレやコレやと語り尽くす本企画! その作品、そして、クリエイターならではの視線とは……!?
今回「すごい!」のは……このマンガだ!!
『復刻版 週刊少年ジャンプ パック 1』
集英社 ¥833+税
第6回の作品は、少年マンガを語るなら、この雑誌は外せない!!
そう、「週刊少年ジャンプ」です!!!
先日の『復刻版 週刊少年ジャンプ パック 1』で創刊号の復刻が大いに話題を呼びましたが……リアルタイムで「少年ジャンプ」の創刊を目の当たりにした中島さんは、当時何を思っていたのでしょうか!?
『週刊少年ジャンプ』が創刊50周年記念ということで、創刊号と最大発行部数653万部を記録した号の2冊が復刻された。
このコラムのネタ探しも含めて最近、古いマンガのことを考える機会も多いところだったので、なんという絶妙なタイミング。発売日も待ち遠しく、いそいそと買ってきた。昭和43年(1968年)創刊だから当時僕は9歳。その頃からマンガ少年だったので、もちろん読んだ記憶はある。表紙を見るだけで懐かしい気分になった。
(画像)©少年ジャンプ創刊号/集英社復刻版の創刊号表紙。当時を知る方には懐かしく、
近年の「週刊少年ジャンプ」の表紙しか知らない方には「こんな表紙だったのか」と驚きをもたらすだろう。
その頃、マンガ誌は月刊誌から週刊誌へと人気が移行していた時代だった。
僕がマンガを読み出したのは多分、4、5歳からだ。最初は『少年』や『少年画報』などの月刊マンガ誌のほうが楽しみだった。組立付録も豪華だったし、別冊付録のマンガ誌が何冊もついていた。1冊買ってもらえれば、楽しめる時間がたっぷりある。「マガジン」や「サンデー」もすでに創刊されていたが、読みごたえでいえば月刊誌に軍配が上がった。でも「サンデー」の『伊賀の影丸』や『おそ松くん』、「マガジン」の『巨人の星』など週刊マンガ誌からヒット作が出、時代のスピードも週刊誌のほうが好まれはじめ、月刊マンガ誌は人気が落ちていった。『鉄腕アトム』、『鉄人28号』、『サスケ』、『電人アロー』、『ストップ!にいちゃん』、『忍者ハットリくん』などの人気作が目白押しで一番人気だった光文社の「少年」も、昭和43年3月号で休刊となった。「まさか『少年』が!?」と、子ども心に驚いたことを覚えている。
『少年ジャンプ』は、まさに月刊マンガ誌時代から週刊マンガ誌時代に変わるその象徴的な年に創刊されたことになる。あの当時、マンガ好きだった小学生の自分にとっては、「ジャンプ」は後発の二流誌という印象だった。
週刊誌としてはすでに「少年マガジン」「少年サンデー」「少年キング」があった。
「ジャンプ」に続き翌年には「少年チャンピオン」も創刊されるが、この2誌は当初は隔週誌だった。まず週刊誌じゃないというところで格落ちの感があった。しかも手塚治虫やさいとう・たかをという当時一線級の作家が載っていた「チャンピオン」と比べても、『ジャンプ』は見劣りがした。好きだった永井豪が『ハレンチ学園』を描いてはいたが、全体としては荒っぽくて泥臭いマンガが多いという印象だった。その頃の『ジャンプ』でなぜか覚えているのが、眉月はるなというマンガ家だ。『アニマル球場』という野球マンガを連載していた。細かいことは覚えていないが、獣のような野生児達が打倒巨人軍をめざすチームを作るという、のちの『アストロ球団』のような作品だったと思う。というか、『アストロ球団』が始まった時に「『アニマル球場』みたいなマンガが始まったな」と思ったと記憶している。
荘司としおをもっと泥臭くしたような絵柄で、キャラが衝撃を受けた時に「ビッターン」という擬音を使うのが印象的だった。『巨人の星』で、ショックを受けた時に「ガーン!」という擬音が入るのが流行ったのだが、その亜流だなと子ども心に思ったものだ。それから2、3作は連載作品があったと思うのだが、やがて見かけなくなった。今回のコラムを書くのに調べてみたら、マンガ家からアニメーターに転身されたようだ。
決して垢抜けてはいない彼のマンガの雰囲気が、自分にとっては「ジャンプ」的だったのだと思う。(画像)©週刊少年ジャンプ1995年新年3・4合併号/集英社かつては「泥臭さ」が特徴的だった「ジャンプ」も、今や少年マンガの王様。
その象徴ともいえるのが、発行部数653万部を記録した、伝説の1995年新年3・4合併号だ。
その「ジャンプ」が、のちに600万部を超える部数まで達する日本一のマンガ雑誌になろうとは夢にも思わなかった。
多分、大半の読者には想像もつかないことだと思うので、今回は『ジャンプ』創刊当時の一読者であるマンガ好きの子どもの思い出話を書かせてもらった。
今私たちが知っている各マンガ雑誌のカラーも、長い歴史のなかでゆっくりと培われていったもの。その「歴史」に思いを馳せながら、各年代のマンガを見ていくと、転換点となる作品が見つかるなど発見もあるかも? 「復刻版 週刊少年ジャンプ」シリーズもパック2、パック3と続いていますので、注目です!!
ジャンルも時代も様々なマンガを紹介してきた本企画ですが、次回はどのマンガが紹介いただけるのでしょうか? 最新の少年マンガ? 往年の名作少女マンガ? はたまた……? 乞うご期待です!!
公開中の【連載企画】中島かずきの「このマンガもすごい!」
<第1回>大月悠祐子『ど根性ガエルの娘』
<第2回>関川夏央/谷口ジロー『「坊っちゃん」の時代』
<第3回>竹宮惠子『少年の名はジルベール』
<第4回>水樹和佳子『樹魔・伝説』
<第5回>諸星大二郎『暗黒神話』