話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『Dr.STONE』
『Dr.STONE』 第1巻
Boichi(画) 稲垣理一郎(作) 集英社 ¥400+税
(2017年7月4日発売)
タイトルの「Dr.STONE」の意味のひとつは、石けんのこと。バイキンを浄化する炭酸カルシウムの塊は、医者がわりの石だ。文明が一度は滅びて、病気=ゲームオーバーのこの世界では「命の石」なのである。
主人公は高校の科学部部長だった千空(せんくう)と、熱血漢で体力バカの大樹(たいじゅ)の2人。
ある日、大樹が片想いしてるクラスメートの杠(ゆずりは)に告白しようとすると、異変が起きた。突如、謎の光が世界を覆い、全人類が石化されてしまったのだ。
それから歳月は流れて、西暦5738年。約3700年後の世界で大樹は石化が解けたが、その前に千空も復活していた。すでに雨露をしのぐ住居や生活基盤をつくって……。
その数千年後、主人公の大樹は気合いで石化を破ったものの、目の前にはすべてが自然にかえった景色が広がっていた。
少年マンガで文明が滅び去った世界を舞台とする「ポストアポカリプス」は定番のひとつで、珍しくはない。「週刊少年ジャンプ」の大先輩『北斗の拳』や、映画『マッドマックス』シリーズだってそうだ。そんな過酷な世界で生き抜くサバイバルも、古典的なテーマといっていい。
だが、主人公たちの目指すところは、ただ「生き延びる」ことのはるか先にある。高校生たった2人で(まぁあとから増えていくが)ゼロから文明をつくり出す! スーパーヒーローだってやり遂げたことのないような、壮大なビジョンだ。そのなかの大きな一歩が、石けんづくりなのである。